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向こうから、舞台上の声が響いてくる。その瞬間、キャンディの足が止まった。聞き間違えるはずがない、テリィの声だった。いつもの声とはまるで違う。低く、よく通り、空間全体を支配するような声。フランクが扉へ手を掛ける。「ここから先は、彼を“テリィ”とは呼ばない方がいいです」キャンディははっとする。「……はい
「劇団には、いずれ話さなきゃならない。結婚するなら当然だろ」テリィは静かに続ける。「その前に、少なくとも一人。俺のすぐ近くで動く人間には知っておいてもらった方がいいと思った」「それがフランクさん?」「ああ。俺一人のことなら、どうにでもなる。でもこれからは、きみのこともある」キャンディは何も言えなかっ
ポニーの家の大きく開け放たれた窓からは、焼きたてのクッキーの甘い匂いが午後の風に乗って流れ、丸いテーブルには、湯気の立つ紅茶が静かに並べられている。そのテーブルを囲むように座っているのは、キャンディ、アニー、そしてパティの三人。それぞれが別々の場所で新しい時間を生き始めてから、以前のようにただ他愛も
先ほどまで笑い声のあった部屋には、今は穏やかな静けさが戻っている。キャンディは白いシーツを胸元まで引き上げたまま、ベッドの上からテリィを見つめていた。ローブを羽織ったテリィは、鏡の前で髪を整えている。ほんの少し前まで、あんなに無防備な姿で笑っていた人とは思えないほど、すでに表情が変わり始めていた。今
朝の淡い光が、カーテンの隙間から静かに差し込んでいた。夜の名残を残す部屋には、まだ深い静けさが満ちている。キャンディはゆっくりと目を覚まし、身体を動かそうとして、ふと止まる。昨夜、何度も抱きしめられた感覚が、まだ身体のあちこちに残っていた。腕に触れたぬくもりも、指を絡めた感触も、耳元で何度も囁かれた
キャンディたち家族が村を発ってから数日が過ぎた。ポニーの家も、診療所も、牧場も、いつもの穏やかな日常を取り戻している。けれどエリオットの心には、あの再会の余韻がまだ残っていた。十三年ぶりに再会したキャンディ。そして、その隣にいたテリュース・グレアム。長い年月を経てようやく見つけた答えが、今になって少
LONG READING NOTICEここから先は、長い物語ですここから先は、ゆっくり読むための長い記事です。深呼吸してから、好きなペースでどうぞ。急がずに 灯る蛍を 追うように⟳更新日2026年02月23日 06:20:00[data-toc]{background:#ffffffd9;borde
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マンハッタンの中心部にある百貨店は、昼下がりの賑わいに包まれていた。大理石の床に高い天井。行き交う買い物客たち。ショーウィンドウには最新の流行を取り入れた衣装が並び、季節を先取りした装飾が目を引く。車を停めると、テリィは深く帽子を被り直した。マフラーも引き上げる。隣のマイケルも同じだった。「そこまで
…ーン鉱山事故で近く病院へ運ばれていた重症患者たちは、容体が落ち着いた者から順次、シカゴのクック郡病院へ転院し、ジョーをはじめ長期の治療が必要な負傷者たちも、今はそこで療養を続けていた。キャンディもまた、彼らの看護を引き継ぐ