
21JUN.
タイトーのルーレットゲーム(2) エメラルドホール(1989)
ビデオゲームブームにより冬の時代を迎えていたメダルゲームも、80年代も半ばを過ぎるころから徐々に復権してきました。この時期、セガは「ワールドビンゴ(1986)(関連記事:セガのマスビンゴゲーム(1)グループビンゴからワールドビンゴまで)」、「ワールドダービー(1988)」、「ビンゴサーカス(1989)(関連記事:セガのマスビンゴゲーム(3) ビンゴサーカス(Bingo Circus, 1989)とその後継機)」と、立て続けに大型マスメダル機をリリースしてきました。この頃の日本はバブル景気に浮かれていた時代でした。そのせいか、これらセガのマスメダル機の筐体デザインは、従来品と比べて装飾が多くハッタリが効くものになりました。このような豪華な筐体はコストが上昇するので、作って売るにはそれなりの財力と営業力を要することは想像に難くなく、そこはさすが業界最大手のセガと思います。さて、このような背景のもと、もう一つの最大手であるタイトーは、1989年に大型ルーレット機「エメラルドホール」をリリースしました。▲タイトー「エメラルドホール」のフライヤーの表裏。従来のタイトーのメダルゲーム機の筐体デザインは、どれもこれも良く言えば常識的、悪く言えば凡庸で退屈な印象でした。しかし、おそらく当時の世相と攻めるセガへの対抗心もあったのでしょう、エメラルドホールの筐体は大きなマーキーと多数の白熱球を使用して「カジノの女王」の風格を表現しようとする意欲が感じられます。また、28インチ大型モニターに表示したベットレイアウトを4人のプレイヤーで共有してベットするスタイルは、実際のカジノのルーレットを思わせる力作でした。ところで、日本でよく知られているルーレットは、1から36までの番号に0、及び00を加えた38分割のアメリカンホイールです(0のみで00がない、37分割のヨーロピアンホイールも知られている)。この場合のペイアウト率は94.73%で、このままではメダルゲームとしては高すぎます。そこでタイトーはアメリカンホイールに「000(トリプルゼロ)」を追加して、ペイアウト率を下げました。余談ですが、このプレイヤーにとって全くうれしくないルール変更は、およそ30年後(大体2018年頃から)にラスベガスのカジノでも次々に採り入れられるようになり、シリアスプレイヤーから「強欲」との非難を浴びることになります。これは何もカジノがタイトーを真似たというわけではなく、負の収斂進化(分類学的には全く異なる生物でも環境が同じなら似た形状に進化する)というものでしょう。強欲なラスベガスのカジノ経営者は、アメリカンホイールの5.3%のハウスエッジでは満足できず、7.7%に引き上げたのです。ひどいことにごく最近には「0000(クアドラプル・ゼロ)」を導入したホイールも登場していると聞きます(この場合のハウスエッジは10%)。実はタイトーが施した工夫はもう一つあって、回転盤上に「★」のポケットを新設し、ここに球が落ちると「LOST OR JACKPOT GAME」となり「大量メダル獲得のチャンス」と言っています。しかし、実はワタシはこれについては覚えがありません。★のポケットが盤面にいくつあったのか、それによって発生する特別なゲームがどういうものであったのかは不明なため、エメラルドホールの正確なペイアウト率は算出できません。しかし、いずれにしてもトリプルゼロ・ルーレットのペイアウト率である92.3%よりも高くなるものではなかったであろうと推察します。ペイアウト率はともかくとして、表面上はよくできたように見えるエメラルドホールでしたが、ボール射出時の回転盤の状況からゲームの結果がある程度予測できるという欠陥がありました。ワタシもこれで結構メダルを稼がせてもらったものですが、おそらくオペレーターから苦情が多く来たものと思われ、タイトーはかなり早い段階で対策を講じました。その対策とは、ベット締め切り後に盤速(回転盤の回転速度)を不規則に変化させるというものでした。回転盤の制御をどうやっているのかはわかりませんが、回転開始と停止をソフト制御している以上、プログラム次第で盤速を制御することはできるはずです。そしてそれは、新たな機構を追加せず、プログラムの変更だけでできるので、コストの面では最善と言えるかもしれません。しかしワタシは、これはゲームを台無しにしてしまう愚策だと思いました。ルーレットは出目を当てるゲームであり、プレイヤーは自分なりの根拠を以て出目を予想します。球投入のタイミングと盤速はその有力な根拠となるものですが、それが使えないとなれば、自分のラッキーナンバーとか、それこそ本当にデタラメ、無作為に選ぶ人でなければ楽しめません。ワタシはこれを機にエメラルドホールを遊ぶことはきっぱりとやめました。やるならもう少しバレにくいやり方はなかったものかと思います。((3)カジノビーナスにつづく)お詫び前回記事のタイトルには「前半」と付け加えられていて、本記事はあたかも前・後半の2回シリーズであるかのように見えましたが、実際に書き進んでみると後半が長くなりすぎてしまうことに気づき、当初の目論見を見直して全4回のシリーズとしたいと思います。これに合わせて前回記事のタイトルは修正しています。ご高覧いただいている皆様には不手際をお詫び申し上げます。

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