15MAR.
白、降る日に 27
山の妄想話ですBL要素あり 抱きしめていた腕に力が入る智…すまない…もう…限界だ え…?俺は彼の手を取り走った仕事も潤も頭に無かったど、何処に…しょ…さ…ん? 途切れ途切れに何が言っていた…智の声も…聞こえない…気がつけばホテルに入っていた翔?う!翔さんに唇を塞がれ荒く服のボタンを外された自分の服も剥ぎ取るように脱ぎ捨て僕らはベッドに倒れ込んだ智…さと…嫌なら…翔さんは泣きそうな顔で言ったううん?愛してる…ずっと…こうしたかった ……………あと…何を言ったか記憶にない…智のぬくもりと…喘ぐ声だけが俺を…翔…愛して…る
途中下車…9
ペースメーカー植え込み入院中の盗聴
スローバラード…⑪
Side−A「櫻井さんは抱えているものって、ありますか?」俺の問い掛けに、櫻井さんは「…あるけど…素面じゃ話せない、かな…」と言った。タイミング良く『コトン』と置かれたウイスキーの入ったグラスは、潤さんの気持ちなのかな、って思った。「もう…何年前、十年以上前になるかな…。オレはサラリーマンやってた頃があってね…。ただ我武者羅に、仕事をやってた。」櫻井さんは、オンザロックのウイスキーを呑みながら、ぽつり…ぽつりと語り始めた。「子会社から来た、大学を卒業して…就職してニ年目だって…言ってたな…。その…子会社から出向して来た社員が、オレの部署に配属になって…だな」『コト…ン』2杯目のグラスが置かれた。「オレは、その社員の教育係になって…。頑張ってた…な。あの子はあの子なりに…。」「『頑張れ』とか、『君なら出来るよ』なんて、オレは無責任な言葉しか、言ってなかったんだよね…。どうして、もっと…ちゃんと向き合って、気をつけて…見てやれなかったのかな…」俺はこの時、櫻井さんに『抱えているものがあるか』なんて、聞かなければよかったと思った。けど、もう後戻りは出来ない。言葉にしてしまったことは、取り返しがつかない。それは、俺が一番良く分かってるつもりだったのに…。「こんばんは…って、あれ?」櫻井さんの電話でやって来た井ノ原さんが、店のドアを開けた途端、俺と櫻井さんを見て、顔色を変えた。「どうしたの?何だか、雰囲気暗くない?」「あの…」俺は、井ノ原さんに「実は…」と、俺の人探しの話と、櫻井さんに『抱えたもの』を聞いたことを詫びた。「ふふっ…井ノ原局長。お疲れさま…です」「櫻井…酔ってる?」「酔ってません…って」「…仕方ないな。俺が奢るから、好きなだけ、呑みなさい。」「ありがとう…ございます」櫻井さんは煽るようにして、ウイスキーのグラスを空にした。呑み続ける櫻井さんを背中に、井ノ原さんから聞いたのは…「櫻井と、俺は…昔、仕事で繋がってたんだ。」その当時、井ノ原さんは子会社の課長で、櫻井さんは親会社の係長だったという。子会社から出向した社員は、元々井ノ原さんの部下で、将来を見込まれてその社員は親会社に出向した。ところが、その社員が仕事で行き詰まり…「プレッシャーとか、親会社の社員たちの妬みとかが重なって、薬を飲んだんだよ…。睡眠薬をオーバードーズで…」「えっ?それって…まさか…」「そのまさか、だったけど…自分で救急車を呼んでね…。途中で怖くなったらしい。幸い、命を取り留めたまでは良かったんだけど…」櫻井さんは、自分を責めてしまって、仕事も手に付かなくなった。「それが元で、離婚して…。会社も解雇同然で辞めて…。俺も、責任感じちゃって、会社を辞めて、さ。この町に戻って来たんだ。」「あの…井ノ原さんて」「うん、此処が出身地。でも、仕事が無くて、ぶらぶらしてたら『ラジオ局、やんないか?』って、声を掛けてくれるヤツがいてさ?暇だったし、『やってみるか』って、軽いノリで始めたんだ。」誰しも皆んな、胸に抱えているものがあるんだと、俺は改めて思った。「そのうち、どうにか軌道に乗ってね?櫻井に声を掛けて…で、今に至る、ってわけ」いつの間にか、櫻井さんは酔い潰れたのか、テーブルに突っ伏していて、井ノ原さんが何度も声を掛けた。「櫻井は未だにあの頃のことを引き摺ってるんだよ。いくら呑んでも忘れられないらしくてね…。」それでなのかな、俺に保護者みたいに甘いのは…「しょうがない、タクシーを呼んでもらえる?」井ノ原さんは潤さんにタクシーを呼ぶように頼むと、櫻井さんの分の支払いを済ませた。「こりゃあ…明日の放送は無理だな。相葉くん、明日は俺がディレクターするわ」「あ、ハイ。よろしくお願いします」「序でに、コイツのことも、頼める?」「は?」「このまま帰すのは、ちょっと心配だからさ?相葉くんの所に、泊めてやってよ?」「はぁ…でも…」「そうしてあげて?ねっ?」銀子さんからも頼まれて、俺は櫻井さんを俺のアパートに泊めることになった。井ノ原さんの助けを借りて、どうにかこうにか、櫻井さんを俺の部屋まで連れ帰り、ベッドに寝かせた。俺だけ床で寝るのは、冬場の今は流石に無理だなと思い、狭いベッドにどうにか潜り込んだ。ベッドの中で、俺の肩に凭れ掛かる櫻井さんは、何だかいつもより小さく感じた。『二人で 毛布にくるまって』ふと、『スローバラード』の歌詞が頭に浮かんだ。シチュエーションは全く違うけど、こんなふうに誰かと肩を寄せ合って眠るのは、いつぶりだろう…。櫻井さんの寝顔を見てると、一人で肩肘張ったところで、結局は限界が見えてしまうんだなと思えた。俺の個人的なことで、誰にも迷惑を掛けたくないって、思ってたけど…『俺が探しているのは、俺の姉です』と、今なら素直に言えそうな気がした。…つづく。