
16JUN.
不器用な二人 Ⅲ
※的野成人してる設定です「美羽、弱いのに」美青はイタズラぽくバカにしてくる美青が成人した時にお酒解禁となって、みんなで乾杯したのだが、見事に私が先に潰れてしまった、1個下のやつに負けたのだそれ以降この1個下の同期はバカにしてくるようになった「帰ろう、美羽」帰れない。帰りたくない。「やだ」「そういう訳にいかないよ」「...みおには関係ない」と拗ねたように言うとにかくひとりにしてほしいのに、どうしてそんな願いすら聞き届けてくれないのだろうか、頭の中にあるものすべてが、バラバラに散らばっていて、うまく考えがまとまらない。「…もう」ひとりごとのようにつぶやいた美青の声が、妙にダイレクトに耳に響いた。テーブルに突っ伏したまま、目を見開く。 わかっている。美羽自身が一番わかっているのだ。この面倒くさい性格を。誰よりも、美羽自身が一番、忌み嫌っていることだ。「知ってる。言われなくたって…」きっと。きっと、夏鈴さんだって同じことを思っているはずだ。付き合い始めて三年。もうそろそろ気がついているだろう。美羽が、ちょっとそこらじゃ見かけないくらい面倒くさい女だと。美羽がこんなふうに夏鈴さんのことで女々しく悩むのは、これが初めてのことではなかった。最初は、彼女に告白されたとき。散々悩んで、果てには周りの人間も巻き込んで、結局夏鈴さんと付き合うことになった。「あー…終わった」「何が」「夏鈴さんのこと。完全に嫌われた」後輩を使って、浮気調査をされるなんて。実際、なにもやましいことなどしてはいないし、そういう素振りをみせたつもりもなかった。それなのに、彼女は美羽を疑った。(信用なかったのかな、私って)自分で心で思って、脱力する。いっそのこと彼女が美青のように、面倒くさいなら面倒くさいとはっきり言ってくれるような人間だったらよかったのに。水面下で根回しをしようとしたから、関係のないゆづまで巻き込んでしまった。きっと、彼女は気に病んでいるだろう。「…なにがいけなかったんだろう」 美羽は手のひらを握りしめ、ぎゅっと目をつぶった。 美羽には誰にも打ち明けていない悩みが2つある。 ひとつめ。私と夏鈴さんの関係は世間一般からみれば普通ではない。誰だって女の恋人が、女だとは思わない。自分はともかくとして、恋人が女であるということで夏鈴さんに迷惑をかけるようなことがあってはならない。絶対に。 ふたつめは。とにかく、なにがあっても夏鈴さんに嫌われないようにすること。付き合い始めて、たった数か月。美羽は彼女との間に、言い表せぬ壁があることを思い知った。それは、美羽自身が作り上げてしまった壁だ。自分が作った壁を、私は壊すことができなかった。それから三年。ずっと、ずっとずっとずっと、苦しんできた。彼女の隣にいるのが苦しくて苦しくて、とてつもなく幸せで、その幸せを感じるたびに、やっぱり胸の奥がどうにかなってしまうのではないかと思うくらいに苦しかった。とにかく彼女に嫌われてはならなかった。できるだけ長く一緒にいたかったし、そのためならば、どんなことでもやろうと心に決めていた。「なんで美羽は夏鈴さんと暮らしたくないの?」「…………」「好きなんでしょ?」美青の問いに、美羽はわずかに肩を揺らした。ゆっくりと息を吐く。テーブルに突っ伏していた顔をようやくあげて、隣に座る美青を見た。まっすぐに。「好きだよ」あまりにも混じりけのない声で言うものだから、一瞬美青は何かを言うのを躊躇った。「だったら、断る理由なくない?」「…ある」「えーあるー?じゃあ、これからも、家政婦みたいな真似事を続けるの?一生、便利屋だよ?」美羽は掌を握りしめた。夏鈴さんに嫌われたくない。その一心で、私はここまでやってきた。甘えたい気持ちもひた隠し、どこかに一緒に出かけたくても、彼女を気づかって我儘を言ったことなんてなかった。どんなに自分の体が疲れていても、早朝に彼女の家に行って家事をこなしたし、なにも文句も言わずに応じた。夏鈴さんのためだったら、なんだって出来た。 都合がよくて便利。だから、手放さずにそばに置いておこう。たとえそんな理由だったとしても、まったく気にしない。夏鈴が私を手元に置いておいてくれるのならば、どんな風に思われてもかまわなかった。「別に。一生便利屋でもいい。夏鈴さんのそばにいられるなら」「ちょっとみう、いい加減にしなよ」「夏鈴さんは美羽を小間使いみたいに扱うのが嫌だから、同棲しようって言ってきたんじゃないの?」「……………」「夏鈴さんも美羽を好きだから、言った言葉でしょ。もう美羽、いいかげん、」美青が言い終わる前に、美羽は大きく首を振った。細い金糸が、パラパラと音もなく揺れる。「...一緒になんて暮らせない」うつむいて、唇を噛む。共に暮らすということは、そんなに簡単なことではない。自分のすべてをさらけ出して、相手のすべてを受け入れること。私には、それができるか定かではなかった。相手の奇麗な部分だけを見ているわけにはいかなくなるのだ。寝食を共にして、夏鈴さんがもし不意に我にかえったら。女なんかと付き合って、同棲して、なにかの拍子に心が冷めてしまったら。耐えられない。それに。馬鹿みたいな寝顔をみられるのが嫌だ。起き抜けの寝ぐせでぐちゃぐちゃな髪の毛も。要領も悪いから掃除や洗濯は人一倍時間がかかるのも知られたくない。休みの日は家でごろごろしていて、スーパーに買い物に行くときにはスウェットとださいサンダルで出かけることも知られたくない全部、夏鈴さんには知られたくない。見られたくない。どんなことがきっかけで、夏鈴さんが我にかえるか、その可能性を少しでも回避しなくては。同棲なんてしたら、とてもじゃないが私は自分の素の部分を隠しきれる自信がなかった。そしてなによりも、「好きで好きでしょうがない。こんな気持ち、夏鈴さんには、知られたくない」知られたら、ひかれるに決まっている。これ以上近づいたら、バレてしまう。気づかれたら、きっと夏鈴さんは面倒くさいと思うだろう。重いと思うだろう。気持ち悪いと思うだろう。幻滅するだろう。そうなったらと思うと、もうどうしようもなくなってしまう。「バカ、悩むだけ時間の無駄。その気持ちを、一度夏鈴さんにぶつけてみなよ。その後のことは、その時考えてさ」美羽は、また首を横に振った。両手で顔を覆う。じんわりと熱かったのは、額と目頭だ。「いやだ。嫌われたくない…」ただひとこと、蚊の鳴くような声で言った。・背中で美羽が寝息をたてている。厄介ごとに巻き込まれたな、と美青は深いため息をついた。酔いつぶれた美羽を引きずって店をでた。当たり前だ、それほど酒に強くもないのにアルコールを摂取したのだから。だいぶ体に疲労もたまっていたようだし、覿面に効いたのだろう。美青は美羽を背中におぶって彼女のマンションまで送っている。背丈が同じだから少し運びずらいけどずり落ちてくる美羽の体を後ろ手で支え直した彼女の神経質すぎる性格は、美青には理解できない。恋愛はたしかに難しくて、私も考えるすぎることはあるけど、美羽ほど神経質ではない関係がはじまった時から、すでに終わりを考えるような子なのだ。しかし、それもこれも、きっと彼女が自分の恋人に惚れこんでいるからこそだといえるのだけど美羽のマンションにたどり着き、エレベーターを使って三階まで上がる。扉を開け、そこを通り抜けたところで、美青は足を止めた。「夏鈴さん…」美羽の部屋の前に、見覚えのある先輩の姿。最近、金髪から茶髪に染めたボブの女性が、こちらを睨んでいる。なんとなく状況的にまずい予感はしたが、ここで取り乱したら余計に怪しまれると思い、美青は平静を装うことにした。「誤解しないでくださいね。美羽が酔いつぶれたから送ってただけですよ」「どうかな」ああ、完全にキレてるな。夏鈴さんの声の調子で、なんとなく察しがついた。今、この先輩はきっと私と美羽の関係を完璧に誤解しているだろう。美青は美羽の部屋の前までスタスタ歩いていくと、玄関のすぐ横においてあるサボテンと多肉植物のプランターを足でよけて、その下に隠してある部屋のカギを拾い上げた。以前、飲み会の席で美羽がそこに合いカギを隠してあると聞いたのを記憶の片隅に残していたのだ。「鍵のありかまで知ってるんだ。」「え、いや」「手だしたの?美青ちゃん」すごく怖い、ほんとにこわい「なんでそうなるんですか。ただ送ってきただけですよ」「ふーん」夏鈴さんの視線からは殺気しか感じられない。ここで彼女に何かを言ったところで、理解してもらうのはおそらく無理だろう。とりあえず、この背中にいる彼女を片付けるのが先決だ。彼女が背中にいるだけで、夏鈴さんの殺気が未知数まで上昇するのは目に見えている。ここで言い合っていても埒が明かないので、とにかく夏鈴さんは放置することにして、美青は美羽の部屋のカギをあけて扉のなかに入った。夏鈴さんはムッと顔をしたそれはそうだろう。夏鈴さんは美羽の部屋にあがったことがないと言っていた。それを、目の前で他人がズカズカと部屋に上がり込むのをみたらいい気分ではないのは理解できる。しかも、その他人が酔いつぶれてほとんど意識のない恋人を背中に背負っているとなれば、相当頭に血が上っているはずだ。美青はおかまいなしに美羽の部屋にあがりこむと、寝室と思われる部屋のドアを足で器用にあけ、室内にあったシングルベッドに美羽を置いた「起きてる?みう」ほとんど酔いつぶれていて意識がまどろんでいるはずだが、私と夏鈴さんが言い争っているのは、美羽にもうっすらと聞こえていたはずだ。「…気持ち悪い」「でしょうね」「そのままの格好で寝ないでよー。 きがえよ」「うー…気持ち悪い」水でも飲ませた方がいかなと思い、キッチンに行くん、?マグカップが2つ、、違和感を覚えた。一人暮らしでマグカップ2つ買うだろうかいや分からないけど(もしかして…)馬鹿らしくなってきた。きっと、美羽だって何度もこの部屋に夏鈴さんを招こうとしたはずだ。そうでなければ、色違いのお揃いのマグカップを用意するはずがない。何度も誘おうとして、何度もその言葉を飲み込んで、そうやって自分の心を殺してきたのだろう。「もう、美羽は不器用なんだから」「………………」「気持ち伝えるだけで違うんじゃない?」そう吐き捨てて、美青は寝室をでた。玄関の扉をあける。目の前には、不機嫌な顔をした夏鈴さんが腕を組んで待っていた。「夏鈴さん、ちょっといいですか」

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