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  1. 内田が車を走らせ着いた先は冬の海が見える駐車場昔、池田君の運転で3人で来た海岸だった「此処なら周りも気にせずに話せるだろ」エンジンをつけたままシートベルトを外してこっちを向いた「うん ・・・ そうだな ・・・ なあ、お前は何処まで知ってるの? 櫻井の実家の事 ・・・」ずっと蚊帳の外にいる僕は(当事者なのに)池田君からの話しか知らないそれが何処までの話なの全く見当がつかない「櫻井の実家の話は お前と似たようなものだと思う 池田は必要最小限の事しか教えないから ・・・  ただ、あの家を継ぐ立場にあって 今の当主の祖父さんが 櫻井の婚約者を早く決めたいみたいだ」「それが ・・・ この前の病院事件の彼女?」「自分で名乗りを上げた 櫻井のまたいとこにあたる」「親戚なんだな ・・・」「うん」「今回の一颯君はそのお兄さんだろ?」僕の言葉に目を大きく見開いて口を真一門に結んだあと盛大な溜息をついて「それ、櫻井が言ったの?」僕の問いへの回答としては十分なものだった「直接的には言ってないよ 怪我をした親戚の子の母親と兄が  病院に向かってる話を聞き その後、池田と一緒に 親戚の子と食事に行った話を聞いた そして今回のハミルトン会社の話  それで、全部繋がった ・・・ 彼奴、滅多に実家の事を話さないのに そんな沢山の親戚が出てくるはずがないよ」沢山の点が散らばっててそれを線で繋げば答えは出る彼は僕が何も疑っていないと信じているだから、自分に都合の悪いことを除いた話をする「この短期間に沢山の親戚が 出てくるのはおかしいと思うよな ・・・ 自分では完璧だと思い込んでるから そう言うミスをする ・・・ 隠すならとことん隠せだよな」いつの間にか許してくれたのか僕の側からの言葉になってた「多分、婚約の話はまだまだ続くだろ?」「そうだな ・・・ 俺も櫻井家がどんな立場にあるのか よく分かっていないけれど 地元にはなくてはならない家なんだと思う 綿々と続く家と言うのは ・・・」「その土地に居なくてはいけない 縛りみたいなものがある ・・・」「ああ、小説とか映画になりそうな題材だけれど すべてが架空じゃない 多分、モデルになりそうな家が有るはず」「そうだな、例えば代々続く陰陽師の家とか? その地の神様を守る家とか ・・・」アニメや漫画によくある題材だただ、荒唐無稽と決めつけるのは違う儀式として受け継がれている家も存在するだから、強ちす見当はずれなことではない「まあ、想像だけどな ・・・ 実家の事は横に置いといて  お前はどうしたいの?」「横に置いて話せることなのか? 万が一、春から仕事場となる トニーたちのオフィスに一颯君がやってきたら どう接すればいい?」「う~ん ・・・ 難しいな ・・・」そう言って考え込んでしまった内田ですら悩むのに ・・・「普通に接すればいいんだよな ・・・ それなら僕は櫻井の親友として ・・・」「それは諦めるって事?」内田には僕の恋心が伝わってたみたいだな ・・・そりゃそうか ・・・ 長い付き合いだ隠せるはずもない ・・・「僕らはまだ始まっていない ・・・ 始める前に色々な壁が立ちはだかってることに気が付いた だから、その先には進めない ・・・」「櫻井が話したとしても?」「この前、一颯君の話をしてくれた時は嬉しかったよ やっと蚊帳の中に入れてくれると思えた ・・・ でも、家を継ぐための結婚が必要なら ・・・ ローダンセの仲間として お前と同じように彼の傍にいるよ」ずっと考えてた ・・・二人の未来を夢見たこともある「そこまで考えていたのなら 俺に話したことも 無かったことにしたい気持ち 何となく分かるかな」悲しそうに笑って ・・・僕の顔を見て頷いた「今まで触れずにいてくれただろ 僕の話を聞いて 一肌も二肌も脱ごうとしてたんだろ?」「ああ、二人が ・・・ 智が 心から笑える日が来るなら その為に一肌脱ごうって思ってた」「だからだよ ・・・」それが辛くなる ・・・「その気持ち彼奴に話せよ」「そんな簡単な事なのかな? そこが分かんないんだ ・・・」「じゃあ、春からの事は伝えろよ それで彼奴がどう出るかだろ?」「そうだな ・・・ トニーたちも来るから 春からの話はするよ」「これからは絶対に隠すなよ! 俺だって怒るからな!」真剣な顔で言った後優しい笑顔に変わって可笑しそうに笑った「うん、お前には隠さないよ」「難しい話をすると 腹が減るな(笑) 何か食いに行こうよ お前のおごりで!」「何でもご馳走するよ!」僕が向こうに行っている間に内田は一回りも二回りも大人になってた成長してないのは僕なのかもしれないな<続きます> 

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  2. 「うわぁ、やだー。行きたくなーい。気持ち悪ーい」玄関に一歩入ってすぐ、思わず出ちゃった本音に、しょーちゃんがくすって笑って、松兄が『お前には緊張感ってもんがねぇのか』って苦笑いされた。和は僕の真似をして『なーい、なーい』って何回も言いながらきゃっきゃして、智の首に抱きついてる。潤は無言で視線を別のところに向けながら後頭部辺りを掻いてるから、きっと同じことを思ってるよね、絶対ね。っていうかみんなの肩や頭に僕の小さくてかわいい『式』たちが乗っててちょっと面白い。「ネックレスに流す『気』は強めの中でいいと思う。が、状況を見て各自で判断して強にすること。ただ、配分間違えていざってときに『気』が足りねぇとかならねぇように気をつけろ。『札』もちゃんと持ってるな?どうにもやばいと思ったら『隠れの札』を使ってすぐ外に出ろ。絶対に無理はすんな。いいな?」「うわぁ、松兄がちゃんとした『術者』みたーい」「いやいやいや、オレは最初からずっとちゃんとした『術者』だ」「え?そうだっけ?」「そうなんだよ‼︎ったく、お前ん中でどんな認識なんだよ、オレはよ‼︎っつかいいな⁉︎大丈夫だな⁉︎」松兄がちゃんと指示してるから、ついつい茶化しちゃったけどさ、でも、ちゃんと本当に『おおっ』て思ったんだよ。松兄がチ◯ピラじゃなくて『術者』してる‼︎って。僕は実戦が初めてだし、潤はまだ見習い。和はなんてまだ1才で、だからもちろん智にも実戦経験はなし。しょーちゃんにはあると思うけど、しょーちゃんは僕の奥さんだからね。だから現役ばりばりの『術者』である松兄がまとめ役になるのは当然。なーのーに、『おおっ』てね、なったの僕だけなのかな。松兄に言われてみんなでごそごそして『札』の確認。この『札』はみんなで家出したときに使った『札』を、もうちょっと強化、特化したやつ。『姿を見えなくする』ってことに。だから松兄命名『隠れの札』。強化して特化したから、使ってる間、多分誰にも姿が見えない。強い『術者』の人にも。ここに来る前に松兄に作れるか聞かれて、多分?って大急ぎで作って、ちゃんとできてるか確認もして来たから大丈夫。松兄に見えなかったんだもん。松兄が『術者』No. 1なんだもん。だからきっと誰にも見えなくなる。はず。『気』を辿って追いかけて来るなんてことも、この『札』を使ってればできない。はず。『お前はもう立派な『札』職人だな』松兄に言われて、頭をぐしゃぐしゃにされて、ちょっと嬉しかったのはここだけの話。『札』職人、だって。しかも立派な。って言っても、僕ひとりじゃ作れないんだけどね。しょーちゃんが居ないと。靴を脱いであがる。僕たちがなかなか行かないからか、黒い塊がまた出て来てこっちを見てた。うわぁ。いや。本当いや。ここから見てるだけで気持ち悪い。そりゃあんなのがくっついてたら、正気じゃいられないよ。おかしくもなるよ。みんなが靴を脱ぎ終わるのを待ちながら、じっと黒い塊を見てたら、何でか急に、何でか無性に。「僕、アレにチョップかましたいかも」僕の結構真面目な呟きに、何でかみんなが爆笑した。松兄は呆れてるのもあるけど。『お前なあ』って。僕がこんな状況でも緊張感なく居られるのは、僕の味方がこうして側に居てくれてるからだよね。味方。僕が、この僕でいいって言ってくれる人たち。危ないって分かってるのに来てくれたみんなに、しょーちゃん、潤、和、智、そして松兄に。ありがとうって思った。でもって絶対チョップかます‼︎って思った。いつまで玄関におるねん‼︎って思った方。大丈夫。私も思ってるコメントお待ちしてます✨

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  3. 気象系の(山メイン)妄想小説です実在する人物・団体とは一切関係ありませんBL的表現(18禁)を含みますご理解のある方のみお進み下さいO side『智…智っ…起きろっ…!』『んぁっ…!?』バサッ!!突然…勢ぃ良く布団が捲られた…『ったく…いつまで寝てるんだ…///!』『だってぇ…///』翔が…なかなか寝かせてくれなぃから…///『智…俺のせいにしようとしてるだろ…?』『ふぇっ…///!?』ば…バレてるっ…///!?『誘ったのは…お前だぞ…?』『うぅ…っ…///』そりゃぁ…そぉだけどぉ…///『そんなことより!卒業式っ…遅刻するぞ!』『へっ…?な…何時っ…///!?』今日は…高校生活…最後の日…なのに…僕は…///子供みたぃに…買って貰ったボードゲームで…前夜…翔と夜遅くまで競ぃ合ってぃた…///『行ってきまぁ〜す…///!』『ちょっ…智っ…!!』ばたばたばたっ…///!急いで家を出ようとしたら…翔に呼び止められて…グイッ…腕を掴まれて…引き寄せられた…///『智…終わったら…迎えに行くから…///』『ぁ…分った…///』クイッ…チュ…翔の唇が…僕の唇に触れた…///『気を付けてな…?』『ぅ…ん…///』たたたっ…///やっと…///やっとだ…///卒業したら…やっと僕は…翔と…///高鳴る胸を抑えて…卒業式に臨んだ…///そして…先生やクラスメートに別れを告げて…僕は…次のステップへ…学校の門を出ると…そこには…『っ…翔っ…///』『智…卒業おめでとう…!』スーツを身に纏って…大きな花束を抱えた翔が…///目の前に立っていた…『ぁ…ぁりがとぉ…っ…///』『フフ…///』花束を渡されて…僕の目から…ぽろぽろと涙が落ちてきた…///『智…泣くのは…まだ早いから…』『ぅぅ…っ…///』クイッ…そぉ言って…涙を拭ってくれた…///『さぁ…行こうか…?』『っ…はぃ…///』ドクンッ…///!こ…このぁと…つ…つぃにっ…///!ドキドキ…ドキドキ…///パタンッ…取り敢ぇず…車に乗り込んだものの…そこから僕は…黙り込んでしまって…///『智…?』『ひゃぁっ…///!?』ドッキーン…///!?ふと…手を握られて…///変な声が…出た…『ふはっ…もうすぐ着くから…?』『ぅ…ぅ…ぅんっ…///!』ドキドキ…ドキドキ…ドキドキ…///鳴り止まなぃ心臓…///『フフ…///』『……///』甘く蕩けるよぉな笑顔で見つめられて…///ますます緊張してたら…///キィッ…『着いたよ…?』『んぁっ…ここは…///』ホテル…じゃなくて…『行こうか…』『ぅん…?』どぉして…ここに…?言われるまま…翔の後を…付ぃて行った…『さぁ…ちゃんと挨拶…しないとな…///』『そ…そぉだよねっ…///』ぅん…///幼ぃ僕を迎ぇてくれて…ここまで育ててくれたんだもん…ちゃんと伝ぇなきゃ…///『とぉちゃん…かぁちゃん…///』『……。』僕は…手を合わせて…両親の眠るぉ墓に…心の中で話し掛けた…『先輩…奥様…報告に来ました…』『へ?』そしたら…ぃきなり翔が…『智を…私に下さい…!』『っ…///!?』翔っ…///!?『智…俺と…結婚して下さい…///』『翔っ…///』そして…今度は…僕の方を見て…伝ぇてくれた…///まさかの…プロポーズ…///『ぉ…ぉ…ぉ願ぃしますっ…///!!』『フフ…有難う…絶対に幸せにする…///』今までに…見たこと無ぃくらぃの…とびきりのスマイルで…見つめられて…///『智…目を閉じて…?』『ぁ…ぅん…///?』ぇっとぉ…両親の…ぉ墓の前で…っ…///?ち…誓ぃの…ち…ち…ちゅぅ…///?? ドキドキ…ドキドキ…///チャラッ…『ぁ…///』『これは…卒業祝いになるけど…』僕の首に…ネックレスが…///『嬉しぃ…ぁりがとぉ…///』『良く似合ってるよ…』プレゼントだなんて…初めて貰ったから…///『指輪は…2人で選びに行こうな…?』『へっ…ゆ…指輪っ…///!?』そんな…そんなっ…///『要らなかった…?』『ぃ…ぃ…いるっ…///!』カーッ…///!まさか…そんなことまで…して貰えると思ってなくて…///『でもっ…ぉ…ぉ金っ…///』『ふはっ…大丈夫だよ…w』今までも…贅沢なんてしてこなかったから…///僕を育てるだけで精一杯だったはずで…///『こう見えて…結構稼いでるからな…?』『そ…そぉなの…///?』し…知らなかった…///『ふはっ…俺は…堅実なだけだから…w』『んふふ…そっかぁ…///』本当に…翔は確りしてる…///なんだかんだ…甘ぇてたのは…僕のほう…///『さ…報告も済んだ事だし…?』『んぁ…?』顔を…覗き込まれた…『戻ろうか…』『ぅん♪』僕は…プロポーズに浮かれて…すっかり…アノ事を忘れてぃた…パタンッ…『智…///』『んふふ…なぁに…///?』ハンドルに凭れながら…翔が…珍しく頬を染めながら…僕の名前を呼んだ…『抱いていい…///?』『へ?』抱ぃて…?『んぁっ…///!?』カーッ…///!そ…そ…そぉだった…///!今日は…今日はっ…///!『ょ…ょ…ょろしく…ですっ…///!』『ふはっ…///』ぺこっ…///!僕は…思ぃ切り頭を下げた…///その後…翔が予約してくれてぃたホテルで…僕は…念願の…///『智…///』『翔ぉ…///』ギシッ…『ぃっ…たぁ〜ぃ…っっ…///!?』『智っ…力…抜いて…///』トラブル発生…///!!ぇ…むりむりむりっ…///!!『っ…最初だけ…だから…っ…///』『ゃぁ…っ…///!』トラブル発生!トラブル発生!こんなに…大変だなんて…///!そぉ…僕の…初めての経験は…///ちょっぴり苦ぃ経験に…///翔も久々で…緊張してたみたぃ…///完璧なんて…なぃ…単純なくらぃに…弾けて動かなきゃ…ダメだった…///ね…?Are you ready??蒼最後はギャグか〜いwお読み頂き有難う御座いました…m(_ _)m次話…s sideにて完となります。

    Troublemaker?200 Fln
  4. 妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。「変な意味でじゃない。会長の葬儀を福岡で行いたいと・・・できれば親しい親族だけの家族葬にしたいらしくて、手続きをしようとしているらしい」「取締役会の方たちが黙ってそれを許すとは思えませんが」「最悪、ご子息一家の参列を拒否する可能性もある。残念ながら福岡での開催は無理だ、さすがに会長の立場的にな。けど、こっちに関しても会長からの遺言を預かっているから安心しろ。会場は東京、喪主は長男指定。ご遺体の搬送に関しては民間のサービスを利用するし、会場も押さえている」「・・・僕はどうすれば?」「とりあえずは自宅待機で。葬儀に関しては関係者が各都道府県にたくさんいるからハイブリット型、主要都市にある葬儀場でライブストリーミング配信予定だ」「・・・はぁ」大野さんが有能すぎて出る幕がない。と、二宮は若干凹みつつも、「お任せします。僕は時が来るまで自宅にいますので」そう伝えてから電話を切った。ふと、鼻の奥がつんと痛くなるのを感じて。デスクに座って真正面を見据えたまま、二宮が己の頬を軽く拭うと、指先が濡れた感覚に当たって自分が泣いていることを自覚する「っ・・・う」涙で歪んだ視界、覚束ない足取りでベッドへと倒れ込んだ二宮は枕に顔を押し付けて嗚咽を漏らす。会長・・・!30年生きてきて、こんなに泣いたのは初めての経験であり、後にも先にもこれ以上の悲しみを経験することはないだろう。二宮の両親は健在ではあるが、会長に対する尊敬と親愛の情は特別で表現しがたい感覚だ。「僕は・・・本当にあなたが望むような人物になれるのでしょうか?」枕に顔を押し付けたまま二宮は自問し、彼の心にはまだ見ぬ未来への不安と恐怖が渦巻いていた。しかし、それでもなお彼は前を向く決断をする。僕にできることは、会長から託された遺言を現実にするために努力すること。・・・それだけ。涙を拭った二宮の瞳に強い意思が宿ったように見える。それは決意に満ちた月の光に似た銀色の輝きだった。*****

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    月と太陽 末ズ㉖
  5. 大宮妄想小説ですBL要素含みますパラレルですside O「智くん、同居生活はどう?」同居して半月程経った日、翔くんが初めてマンションに来た。翔くんはお父さんの後を継いで画商をしていて、翔くんが後を継ぐまでは、俺は翔くんのお父さんの世話になっていた。でも、最初に俺の絵を見出してくれたのはまだ画商を継いでいない見習いの頃の翔くんだったから、翔くんにはかなり感謝しているし、歳も近いから、むしろ画商と画家という関係性ではなく友人みたいな間柄だった。だから、許婚がいる事やこれから同居することも伝えていたんだ。「同居生活は控え目に言って最高」そう答えたら翔くんは笑った。「いや、そうかなって智くん見てたらわかるけどさ。身体から幸せオーラが出てるよね」確かに満ち足りた生活ではあるけど、見て分かるほど出てるなんて思わんかったな。「じゃあ、もう毎日ラブラブなんだ」ああそうか、翔くんには許婚が居て同居するって伝えたけど、和が俺のことを覚えてないから友達として強引に同居を始めた事までは伝えてなかったな。「友達として同居してるだけだから、残念ながらラブラブではねぇな」苦笑しながら言ったら、翔くんが驚いた顔をしたから、和に再会してからのことを話した。そして、自分が口調を変えていることも。「口調変えて和に好かれようとしてんだけど、でもよ、何かそれで好かれても和を騙してるんじゃねぇかって気持ちになって、ちょっと悩んでんだ」「智くん、別に口調変えても中身は変えてないんでしょう?」そう訊かれて頷いた。「じゃあ、口調変えても智くんは智くんなんだし、中身に嘘がないなら大丈夫だと思うけどさ。でもいつかはいつもの口調に戻した方が良いとは思うけどね」「そうだな……、中身はそのままだけど、やっぱ嘘ついてる事には変わりねぇしな……」そんな話をしていたんだけど、やっぱり嫌われるのが怖くて、なかなか和には言えないまま時だけが流れていったんだ。読んだ後に良いねいただけたら大変励みになります

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  6. ゴールデンウイークも、あっという間にすぎ、5月も後半に差しかかれば、二人での暮らしも、仕事にも少し慣れて会社でも普通に笑えるようになってきた。「櫻井。うまくやったな。お得意さん、上機嫌じゃん。」「岡田先輩。そんなことないですよ。俺は、先輩から指示されたとおりに資料作っただけで。」ばんっ。岡田先輩が、背骨が折れるかと思うくらいの力で、手のひらいっぱいひろげて、俺の背中を叩く。「いてっ。」「櫻井。お前、謙遜すんなって。確かに、あのデータから資料作成をお願いしたのは俺だが、あのお得意様にわかりやすく なおかつ データをうまく活用して説得力のある資料として作成したのはお前だ。あれがあったから、あのお得意様も、俺たちの提案に喜んでもらったんじゃねえか。」「へへ。ありがとございます。」背中をさすりながら、岡田先輩に答える。一階エントランスまでお得意様をお見送りした後のエレベーター。うれしさに頬が緩む俺がいる。ぐりぐりと岡田先輩に頭をくしゃくしゃにされながら、自分のフロアである15階のプロダクツビジネス部に帰ろうとすれば、ちん。3階で音が鳴って、エレベーターのドアが開く。「もう、人が来ます。やめてくださいよ。岡田先輩。」ずっとふざけて俺の頭を撫でまわす岡田先輩をやめさせようと、岡田先輩の手首を握った時だった。「あっ。」エレベーターの扉が開いたその先には、腕のところに若い女の子が絡みついている雅紀がいた。⭐︎つづく⭐︎コメントは非公開です。

  7. 〜ただいま予備期間中〜期間は本日〜3月9日(日)21:00までこれ以上締切が伸びることはありません。『予備期間中【必読】アメンバー新規&整理アンケート』〜ただいま予備期間中〜期間は本日〜3月9日(日)21:00までこれ以上締切が伸びることはありません。申請忘れの方が数名いらっしゃいます。アンケートを送ったが承…ameblo.jp申請忘れの方が数名いらっしゃいます。アンケートを送ったが承認されていないという方は、今一度ご確認を。「にしてもさ…キスするなんて、そんなことある?」いや実際はされてないんだけどね。呟いた独り言が反響されてまた自分に返ってくる。そんな短期間で「そういうことをしたい」ような好かれ方をしたのを正直彼のことを担当する担当官として考えるのならば、非常にやりにくいことである。でも今までの言動を思い返せば思い返すほど、彼が自分に好意を抱いているのはあからさまで。そしてそれに逃げきれなくて…いや、応えようとして起こったのが今回のこと。ん…?"応えようとして"?「…。」…17番、泣いてたな。。こけた頬を伝っていく涙。やはり元がいいだけあって、その姿はとても儚く、綺麗に見えた。今までのことを整理することは出来たが、結局自分の気持ちには整理がつかないまま、のぼせてしまうからと湯船から出た。ーーーなんだかんだボーっと過ごしていたら、あっという間に夜が明けて朝が来て。自分が昨日家に帰ってきたのは昼過ぎであり、まだ相葉さんや二宮さんが言う「1日」は経っていないが、支度を整えて留置場へ向かった。「おはようございます。お疲れ様でーす。」普通の顔をして休憩室に入れば、たまたま着替え中である相葉さんに遭遇した。「あ…また更衣室じゃなくてここで着替えて、」「えっ?ちょ、なんで来てんの?!」半裸のまま、相葉さんは驚いたように目をぱちくりさせた。「まだ全然…十何時間しか経ってないじゃん!あれだけ釘を刺したのに、、」「んーーー…なんか家に居てもすることがないんですよねぇ。」「…ホントに休んだ?」「それはもうばっちりですよ。お風呂に浸かってちゃんとぐっすり寝られました。」「本当…?松本さん頑張り過ぎるから俺らも心配してるんだからね?」「分かってます。ありがとうございます。…17番は、、、?」「あぁ…。それが、、、」またお弁当、食べてくれなくて。そう言う相葉さんは半裸であるが、こちらは至って真面目な会話である。なんだろう、反抗期のわんこ?ご飯食べないってホントになんなんだろう。「分かりました。行ってみますね。」「ありがとう。くれぐれも同じことは起きないようにね。」「えぇ。」やっぱり彼は自分がいないとダメなのである。

  8. あれは2000年になったばかりの頃でした。短大を卒業して地方の小さな銀行に勤めていました。数年経って自活するめどがついたので実家で同居していた祖母と離れる事が寂しかったのですが私は憧れの1人暮らしを始めました。うちは両親が共働きだったので小さい頃は祖母が世話をしてくれて、とても可愛がってくれました。「いつでも帰って来れるんだからそ~んな顔しないのっ」この時の祖母の優しい笑顔を今でも思い出します。半年くらい経った頃、「おばあちゃんが危篤だから○○町の○○病院にすぐに来て!」と、実家の母から電話がありました。詳しく聞くと、夕方自宅で倒れて救急車で病院に運んだというのです。その時は会話も出来て、数日入院すれば大丈夫と言われたので、あえて私には知らせていなかったのだが、先ほど病院から電話があって容態が急変したとのこと。祖母は高齢の割には足腰もしっかりしていてその日も特に異常はなかったそうです。私は母から聞いた病院にタクシーで向かいました。時刻は夜中の1時を少し過ぎていました。3階建てのマッチ箱のような病院で【緊急入口】から入るよう母に教えられ、扉のすぐ横にあるインターホンを押して院内に入ると、廊下の暗さにドキっとしました。真夜中の誰もいない無音の暗闇が私の身体の芯まで染み込んで来そうでかなり怖かったです。203号室……勝手の分からない建物に無断で入っているような居心地の悪さをよく覚えています。その時、左前方のどこかの部屋から白い人影の集団がすーっと出て来たのです。まるで壁からすり抜けて来たような。大勢いる感じがするのに、音は全くありません。私は足を止め、その白い集団から目を離す事が出来なくなってしまいました。でも、怖い、というよりは白く発光していてとても美しいのです。美しさに目を奪われている感じすらしました。その集団は長い箱を運んでいるように見えたのですがそれがすぐに棺だと分かりました。どれくらい経っていたのか、時間の感覚がありませんでした。この集団は誰の棺を運んでいるのだろう?棺が私の横に来た時、チラっと棺の中を見たんです。一瞬過ぎて顔は分からなかったのですが、確かに誰かが入っている風でした。黒い縁取りのめがねが胸のあたりに置かれているのだけは分かりました。「こっちよ」母の声で我に返ったのですが、その集団はもうどこにもいませんでした。元の暗い廊下になっていたんです。「あっお母さん、おばあちゃんは……」母の目に溜まった涙を見て、すぐに分かりました。「ついちょっと前に……」病室に入り、ベッドで眠る祖母の顔がまだ寝ているような、呼べばすぐに起きてくるかのように穏やかだったのが救われました。「おばあちゃん、間に合わなくてごめんねーーっ」それから、祖母は葬儀場に運ばれて棺に納められました。私は数日前、病院の廊下で見た棺に入っていたのは、祖母なのでは?とも思ったのですが実際に見る棺の雰囲気が違うので、そのことはすぐに忘れてしまいました。通夜・葬儀が終わり火葬炉の前で職員さんが「では、これで今生のお別れとなります」と言った時に、母が慌ててこんな事を言ったのです。「すみません、これも入れて下さい!!」言いながら黒縁のめがねを棺の中に入れて貰っていました。「お母さん、これがないと困るわよね」去年新調したお気に入りのめがねだったそうです。あっ、思わず声が漏れてしまいました。あの棺の中で見た黒縁のめがね!!今、祖母の胸のあたりに置かれた黒縁のめがねを見て、確信しました。私があの夜、病院で見た棺の中には、やっぱり、おばあちゃんが入っていたんだ、と。おばあちゃんは私が来るまで待っていてくれて、ちゃんと私にお別れをしてくれたんだ。「おばあちゃん、ありがとう」心の中で何度もそう言いました。Yさんありがとうございました。Yさん曰く、その白い人影の集団はとっても神々しくて、清らかで優しい存在のように思えたそうだ。さらに、今思い返すと、実際にこの目で見ていた、というよりは、脳内でというか、夢の中でものを見ているような感覚だったそうだ。でも絶対に夢ではない事は場所が深夜の病院の廊下という事で明らかである。Yさんから詳しくその白い集団の事をお聞きしたらその集団は全員白い着物を着ていたらしい。普通葬送の行列と言えば、黒の喪服だと思ったのでネットで調べると、「日本書紀」や「隋書(倭国伝)」から、古代のわが国での葬儀では、故人の親族も参列者も白い喪服を着用するのが通例だったようだ。つまり千年以上にわたって、日本人には白い喪服こそ主流だったという。*イメージ画像*でも何故、白だったのか??諸説あるが、きっと昔の人達はお迎えに来る使者が白を纏っている事を知っていたので、白の喪服だったの、かもしれない。(なんて……私の勝手な想像だが)いつも読んでくれて、ありがとうございます。怖い話・不思議な話を募集しています。メッセージよりお寄せ下さい♪怨霊注意~素人投稿による怖い話↑このブログで書いた怖い話が漫画になっています。是非是非、読んでみて下さい♪Xもあります↓むらさき (@murasaki1974) / X (twitter.com

    黒縁のめがね
  9. こんばんは。私、島崎といって67歳です。大手の建築会社を部長で退職しまして、今は何もやってません。年金生活です。若い頃は毎日、仕事、仕事でした。62歳で定年になり、それから嘱託で3年間働きました。ですから隠居の身になって2年目なんですが、毎日やることがなくて困りました。かといってこの齢で働くのもねぇ・・・それで、貯金も少しはありますし、何か趣味を見つけてじっくり楽しもうと思ったんです。でね、私、テレビはあんまり見ないんですが、ゆいいつ好きだったのが「なんでも鑑定団」という番組だったんです。ええ、依頼者の方が骨董品や趣味の品などをスタジオに持ちこんで、それにプロの鑑定士が値をつける。あれを見て、骨董収集は面白そうだと思ったんです。もちろん晩学で知識不足ですから、高価な品には手を出しませんでした。ほとんどの収集品は骨董市で手に入れた1万円以下のものですよ。私は妻には5年ほど前に死に別れて、子どもたちは独立していて一人暮らしですし、それくらいのお金はなんとでもなります。でもね、あんまり安いものばかり集めてもねえ・・・何か目玉になる収集品がほしい。そう考えて、出入りの骨董屋から江戸時代の幽霊画を買ったんです。作者は無名でしたが、絵はひと目見て気に入りました。それで思い切って買わせてもらったんです。300万円でした。そこまで高価でもないですし、私としてはいい買い物をしたと思ってたんです。でね、そこの骨董屋のお客さんが集まっての品評会に出たんですよ。座敷を借り切って自分の自慢の品を持ち寄り、お互いに見せ合って感想を言うんです。まあ、ともすればこういう会は自慢大会になりがちなんですが。私も幽霊画を持っていきまして、じつに怖い絵だってほめられたんです。その会で、多田さんという方と知り合いになりました。多田さんは私と同年輩で、じつに品のいい方だったんです。この方とはお酒が出たときに隣の席となって意気投合しました。それで、別の品評会にさそわれたんです。私が幽霊画を出したことを覚えておられて「ああいう系統がお好きなんですか?」と聞かれました。「はい。美術品としての価値よりも、骨董の持ついわれが好きですね」こう答えましたら、「じつは私もそうなんです。その骨董を持っていたのはどんな人なのか? その品に対してどんな思い入れがあったのか、そういうことを想像するのが楽しいんですよね」ということでした。で、その多田さんから別の会にさそわれたんです。ちょっと変わった会だけれど、出てくる骨董はどれも2つとない本物ばかりなんだそうです。私も参加させていただくことになり、会場はあるお寺の大広間、時間は夜の9時からということでした。これ、夜に品評会が開かれることはめったにないんです。骨董はやはり昼の光で見ないと細かな部分はよくわかりませんからね。そのことを多田さんに言うと「まあまあ、夜にやるのは明確な理由があるんです」と言われたんです。私はタクシーで会場に乗りつけ、集まったのは10名くらいでした。みな私と同年輩か年上と思える人ばかりでした。会場には太いロウソクがたくさん灯されており、その炎のゆらめきの中で会長のあいさつがありました。頭のはげた、白いあごヒゲの長い方で、年齢は70歳を過ぎていたでしょう。それが終わって、一人ひとりが自分の自慢の品を披露することになりましたが、新参の私は末席でしたので、自分の幽霊画を披露するのは最後になりそうでした。で、最初の一人が風呂敷から取り出したのは、薄くピンクがかった石でできた香炉でした。日本のものとは思えませんでした。それを出したのは、峰さんという方でしたが、「この香炉は中国の宋の時代・・・今から800年ほど前のものです。その当時の宮廷の女官が使っていたもののようで、ヒスイ製なんですが、こういった色の石は珍しいそうです。で・・・」ここで峰さんは参会者の顔を見回し、「で、この香炉に憑いているのはこんな幽霊です」そう言って香炉に火を入れたんです。「え? 聞き間違いだろうか? 今、幽霊と聞こえたが・・・」そしたらです。その香炉から白い煙が立ちのぼり、中空に中国風の着物を着た女性が浮かび上がったんですよ。うつむいて悲しそうな表情をしていました。峰さんは「この女性は当時16歳。中国の王侯に見初められて側室になったが、正室に嫉妬されて毒殺されたということです」他の参会者は幽霊を見て「おお、美しい」 「さすが中国」などと言ってどよめいたんです。私はもちろんビビりましたが、他の方はみな平気なようでした。その中国の幽霊は香木が燃えつきると同時に消えました。多田さんは自分の前のロウソクを吹き消し・・・次は吉村さんという方で、出品したのは日本の短い刀です。脇差しというのでしょうか。でね、吉村さんがいとおしそうに刀身を布でぬぐうと、やはり中空に鎧武者が出現したんです。「この脇差しは室町末期と言われています。この武者は応仁の乱のときに活躍した武将ですが、最後は首を落とされたようです」吉村さんがそう言うと、武将は両手で自分の兜首を持ち上げてみせたんです。・・・こうして参会者がそれぞれ いわくつきの品を紹介し、そのたびにさまざまな幽霊が現れて消えました。中には恐ろしい声で恨み言を述べた者もおりましたよ。そうして、だんだんにロウソクは消されていき、ついには私の目の前のものだけになったんです。私が持ってきたのは幽霊画ですが、本物の幽霊が出てくることはありません。どう言おうかと迷っていたら多田さんが、「ああ、島崎さん。大丈夫ですよ。その幽霊画には幽霊は憑いてないことは知っています。あなたをこの会にお招きしたのは、少し生気を分けてもらおうと思ったからで」 「え? 生気??」「そうです。今、骨董に取り憑いた幽霊を見たでしょう。あれらはそのままでは長い年月は保たないんです。ときどきの時代に生きた人間の生気を吸わなくてはね」え? まさか私の生気を吸う? 多田さんは、そんな私の考えを見透かしたように「なに、大丈夫ですよ。幽霊たちだってわかっています。死ぬまで吸うことはありません。あなたもしばらくは倦怠感があるでしょうが、そのくらいのものです。2週間ほどで回復しますから」そう言うと、懐から扇子を出して、「それ!」と言って開いたんです。そしたら・・・・それまで見たすべての幽霊が姿を現したんです。そして上空を滑るようにして私に向かってきました。「うわああ!」私は思わず声を上げて、後ろに倒れました。腰が抜けてしまって足が動きませんでした。幽霊たちは折り重なるように私の体の上に群がり・・・私は気を失ってしまったんです。・・・多田さんの言うように死ぬことはなかったです。しばらくは なにもする気にならなかったですが、それも10日ほどでしたね。こうして私はその品評会の一員に加わったんです。これ、新入会員が必ず通る儀式みたいなものだったんです。その後はお仲間に教わり、幽霊が憑いている骨董をいくつか手に入れたんですよ。幽霊が憑いているかどうかを見分ける秘訣みたいなものを教えていただいたんですが、わかってみれば難しいことはなかったです。え、どんな秘訣かって?それはここでは言わないほうがいいでしょうね・・・まあ、こんな話なんです。

    骨董品評会の話
  10. ㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。  ご注意ください。 退院の前日、部屋に備え付けのテレビでは、ハ・インスの父親の会社に家宅捜索が入る様子がニュースで流れていた。金曜日の夕方だったので、ユニはもう来ていた。 「粉飾決算か・・・脱税も入ってるんだろうな。」 ぶつぶつと呟くジェシンの隣で、ユニはせっせと荷造りをしている。とは言っても着替えは下着ぐらいのものなのだ。面倒だから、と病院着を借りていたからパジャマすらない。明日着るものは既に母がロッカーに吊るしてくれている。靴も、と頼んでおいたからちゃんと忘れずに持って来てくれた。抜糸前から許されたシャワーもすでに済ませたから、後はこまごまとしたものを入れればしまいなのだ。 荷のほとんどは見舞いの品だった。ヨンハから毎日のように届いた菓子類、事務所の顧客が見舞いにくれたものも含まれると、いくらユニが菓子が好きでもなくなりはしなかった。まだ未開封で日持ちのする焼き菓子はナースステーションに渡すことにしているが、それでもまだ余る。果物は兄に持ち帰ってもらった。ソンジュンが暇でしょうと勝手に置いて帰った本が数冊、ユンシクが暇つぶしに、とおいていったパズルの雑誌。所長が仕事の時に必要だったら、と持って来た法律書。これが分厚い。 「・・・さっさと捜査しねえから俺が腹をケガするはめになったんじゃねえの?親父の怠慢だよな?」 ぶつぶつは止まらない。ジェシンの父は警察のトップみたいなものだ。責任論を言えば親父のせいなんじゃねえ?と息子であるジェシンは文句を言ってもいいだろう。 ジェシンを刺した男イム・ビョンチュンの供述から、彼の父の会社が資本の中継会社にされていたという事が明るみに出て、そこから経済事件と発展したのだ。動きが速かったのは、早くしないと証拠隠滅が行われるからだ。それに、おそらくマークはされていただろう。こういう不審な動きは、どんなに秘匿していてもどこからか漏れたり、不自然さを感じさせることで発覚したりするものだ。 「明日は退院の事務手続きにユンシクが来るそうよ。お医者様が診察をしてくださってからお家に戻っていいのよね。タクシーは頼んでおきましょうか。」 「いや、明日は兄さんが迎えに来てくれるって話だから大丈夫だ。シクにも面倒を掛けさせて悪いな。」 「ヨリム先輩の代理だそうです。ヨリム先輩お忙しいのね。ユンシクはここの手続きが終ったら、そのまま会社に行くんですって。秘書は交替で休むけど、ヨリム先輩は休みなしだよ、ってユンシクが言ってたわ。」 「あいつの親父さん曰く、もっと忙しかったそうだぜ若い時は。それにあいつぐらいの地位になると、残業関係ないからな。」 「偉いのも大変なのね。」 ユニはまとめ終った見舞いの品をソファの上に置き、ものすごく早い時間にやってきたジェシンの夕食の盆を下げて戻ってきた。両手に紙コップを持っている。コーヒーを買ってきたのだ。 「ユニも・・・毎日来てくれてうれしかった。ありがとう。」 紙コップだから音のしない乾杯をして、二人で退院を祝う。明日だけれど。明日はユンシクや兄ヨンシンやらがいるだろうから二人きりにはなれない。 「もう怪我しないでね。」 「ああ気を付ける・・・って言っても今回のはなあ。」 「うん。分かってるんだけど。でもできるだけ。お願い。」 「ああ。」 少し怯えたような顔をしたユニに力強く頷いてやる。それが一番安心するだろう。ユニはいつもジェシンを信じてくれる。ジェシンだってユニに嘘はつかない。 「俺はな、今回は怪我しちまったけれど、それでも避ける方法も知っているから他の人よりましだった。体力もあるから治りも速い。耐えられる体があるし、少し辛くても支えてくれる人たちが周りにいる。ただ、ユニ、ユニが辛かったり痛かったりするのは困る。嫌なんだ。俺が我慢する方がましだ。お互い気をつけよう。だが、お前が傷つけられそうになったら、俺は飛び込むぞ。俺はお前の、ユニの恋人だからな。」 これからの人生も、そして来世も、未来永劫。 夢はもう見ない。なぜなら、ジェシンに自覚させたから。そのために夢は現れていたのだろう。ジェシンは今誓った。これからを来世を、そして未来永劫を。恋人を、ユニを守ると。 だからもう、夢はみない。にほんブログ村

  11.  雨の日。行きつけのカフェの窓から見える景色は、幾分もやがかかって、見えるものの輪郭を柔らかく描き出している。道行く人、傘の重なり、建物、私と同じく窓ごしにいて何かをする人、彼をぼんやり灯す白熱灯の明かり、それぞれ全てが無言劇のように展開されてゆく。 ふと、母親とその子らしき二人が傘のもとでやり取りをしている、母親の傘が子どもの傘と同じ高さとなり、やり取りの仔細を途切れ途切れにして私に見せてくれた。 どうやら子どもは泣いているらしい、ゆっくりと穏やかに動く母親の傘が、子どもを優しくなだめている事を窺わせる。子どもの點頭に呼応して小さく揺れる小さな傘、涙はいつしか止まったらしい、やがて二つの傘が動き出し、人の流れに乗りながら遠ざかって行った。 カフェの窓際に取り残された私は、あの子の涙の行き先をぼんやりと考えた。自らが涙を瞳を拭い、母親が拭い、服に染み込み、或いはわずかばかりが地面に落ちて、あの子の涙は四散し、蒸発して、空気になり、また雨と混ざって細流を流れ、川となり、海に出て、陽に照らされ天に昇り、雲を作り、そしてまた何処かの街に、森に、そして誰かのもとに降るのかも知れない。 母親とあの子のもとに落ちた雨は、いつかの誰かの涙が溶けているのかも、或いは私がいつか見た小川なのかも、そんな途方もない事を考えたりした。 今日の雨が全てのはじまりではない、全ては巡りの中の一場面に過ぎない、巡りの中では全ての事がはじまりであるのだ。 人はいつも巡りの中にある事を忘れてしまう、はじまりと終わりのみを注視しがちであるけれど、巡りの中に終わりは存在しないのだ。 無言劇は続いている。どれほどの時間が経ったろうか、また先ほどの親子と思しき二つの傘が、来た道をなぞるようにこちらへ向かって来る。 後ろに傾いだ傘のおかげで少し前より二人の様子が捉えやすい、小さな傘は女の子で何かしら嬉しい事でもあったのか、笑顔をのぞかせ歩みは前後に大きく弾んで、その心のうちを他の人々や街並みに告知しているようでもあった。 彼女の喜びのわけはすぐに理解できた。彼女は黄色い真新しい長靴を履き、母親はビニール袋にそれまでの靴を入れて手に携えているのが見てとれた。 小さな傘のもと、右足左足と互い違いに競うように進んでゆく黄色い長靴。喜びのあまりか、長靴の本来の役割を試すつもりか、アスファルトの窪みにできた水たまりにわざと足を踏み入れ、その防水が確かであるのが更なる喜びとなるのか、水たまりの中で彼女の喜びは黄色く弾んで水しぶきを上げ、堪りかねた母親が、笑顔と共に彼女をたしなめる。彼女の黄色い長靴のはじまり、雨の巡りの中に彼女の悲しみと喜びとが、ないまぜになって溶けていった。 あの子の黄色い長靴のはじまりの日に、傍観者がいた事をあの親子は知らない。雨の巡りの中、はじまりのみが累々と続く摂理の中に二人はいた。あの親子に降った雨はいつか私に降った雨かも知れず、あの子の喜びのしぶきがいつか私に降る雨となるかも知れない。途方もない事ではあるけれど、街に繰り広げられる雨の無言劇とは理性で描かれた詩のようなものではないか、もののはじまりと言うものは、科学で専横されたものではなく、たぶんに詩が入る余地のある方が人のぬくもりを感じやすい。 私はカフェを出た。雨はまだ降り続いている。思い立って、あの子の水たまりに少し靴を踏み入れてみる。私が座っていた席の窓ガラスから、雨水が幾筋もしたたり落ちている。 それは、はじまりがしたたり落ちているのだ。

    雨の無言劇
  12. これな、ずいぶん昔の話なんだ。昭和の40年代前半だな。ただ、今とも関係なくはない。もしかしたら、ずっと続いてることかもしれねえんだ。そういう意味では、ただの思い出話とは違う。あれは俺が小学校5年生のときだな。〇〇市ってとこに住んでたのよ。そうだ、誰でも知ってることだが、あそこの市は、ある企業の本社があるお膝元で、すべてをその企業が支配してた。市長はその企業の子飼いだし、今だと信じられねえかもしれねえが、その企業の社員が交通違反をしても、軽いものなら警察も見逃してたんだ。まあ、どこの話かはすぐわかるよな。で、俺の通ってた小学校も、近くに企業の社宅があったから、クラスの3分の2以上の子どもの親が社員だった。ただ、そのことは、これから話す内容とはたぶん関係ないと思う。当時はネットもゲームもなかったから、子どもの話題といえば、まずマンガ、少年ジャンプの話。それからテレビ、あとはプロ野球とか。じつは俺は相撲が好きだったんだが、それは少数派で、相撲の話ができるやつはあんまりいなかったな。で、テレビの話なんだよ。朝早く教室に集まった男子が、前の日の番組の話をあれこれしてた。ほら、さっき社宅があるって言ったろ。工場勤務してる親に合わせて、子どもも早く家を出されるんだ。そんときに、あるやつ・・・山田ってしておこうか・・・が、怖い番組の話を始めた。怖い番組も、知ってると思うが、「あなたの知らない世界」とか流行ってたんだ。うーん、当時はまだ心霊って言葉は一般的じゃなかったと思う。怪奇特集なんて言葉を使ってたな。で、前日は日曜日だったんだが、そいつは「恐怖の扉」って番組を見たって言う。けど、他のやつらは誰も知らない。だから当然、何チャンネルで何時からやったのか聞いた。そしたら、見たのは朝5時だって。それは無理な時間だよなあ。親は連日の仕事で疲れきってて、日曜は下手すれば10時くらいまで起きない。子どももそれに合わせて寝てるんだよ。そもそもだな、昔はその時間帯は番組をやってなかった。砂嵐って知ってるよな。画面が灰色になって乱れてる。要は電波が来てない。「嘘つくなよ」って皆が言ったが、山田は真剣で、「俺な、リトルリーグで野球やってるだろ。そのレギュラーになりたくて、朝走ってるんだよ。5時から6時くらいまで。日曜だって休まねえよ。そんときも、親が寝てる中 起き出して、着替えて走りに出ようとしたんだが、居間に出てきたとき、ふっとテレビつけてみたんだよ。やっぱ砂嵐だったが、チャンネルをガチャガチャ回してたらそれやってたんだ。いやあ、何チャンネルかはよく覚えてない。見てて怖くなって消したから。その後チャンネルは親か弟が変えちゃったし」「どんな内容だったんだよ」 「画面の上のほうに赤い字で、恐怖の扉って出てた。映ってたのは部屋だな。薄暗い、かなり広い部屋。それで、真ん中に自動販売機が置かれてる。ただそれだけをずっと写してるんだ。俺が見てたのは3分くらいだったけど、その間に動くものはなかったな」 「自動販売機? コーラか?」 「わからん、暗くてはっきりしなかったが、全体が赤い気がしたからコーラなのかもしれん」わかるかなあ。まず当時はテレビのリモコンなんてなくて、いちいち手で回してチャンネルを変えてた。それと、自動販売機も少なくて、メーカーもかぎられてたんだ。この話を聞いて、みなは口々に、「そんな時間に番組なんてねえだろ」 「恐怖の扉なんて聞いたことがない」そういい始めた。ただ、その山田は嘘つくようなやつじゃなかったんだ。体が大きいし、スポーツもできて、ドッジボールなんか最高に上手い。だから、本当かもしれないって考えたやつもけっこういたと思う。山田はムキになって「俺が見たのは事実だ。あ、そうだ、先生が来たら新聞のテレビ欄を見せてもらおう。昨日の新聞も学校にはあるんじゃないか」頭もいいやつだったんだよ。しばらくして担任が来たんで、理由は詳しく言わず、「昨日の新聞見せてください」って頼んだら持ってきてくれた。けど、やっぱ日曜の朝5時にやってる番組自体がねえんだ。NHKはじめ、どのチャンネルも放送開始は6時から。地方都市だったから、キー局自体が5つくらいしかない。山田はそれ見てふてくされたような感じになった。で、その日の昼休み、山田は親しい友だちを集めて、「もしかしたら毎朝やってるのかもしれん。明日の朝、起きれるやつは5時にテレビつけてチャンネル回してみてくれ」こんなことを言った。そんときに俺もいたから、ええと、翌日の火曜の朝だな。5時にテレビつけてみたんだ。けど、やっぱ砂嵐だけでな。俺以外にもためしたやつが数人いて、やはり「恐怖の扉」を見たやつはいない。山田は悔しそうに「俺も見れなかった。もしかしたら特別番組だったかもしれんし、日曜だけやってるのかも。嘘じゃないんだよ。次の日曜、5時にテレビつけてみてくれよう」って、泣きそうな顔になってみなに頼み込んだ。で、日曜になって、なんとか起きてテレビをつけた。砂嵐が出たんで、何度もチャンネルをぐるぐる回してたら、映るとこがあったんだよ。覚えてる、7チャンネルで、ふだんは放送が入ってないとこ。かなり乱れた画像だったが、工場の一画みたいなとこが映って、上半分に赤い字で「恐怖の扉」って書いてある。「あ、これか」と思ったが、なんとも気味の悪い画面でな。あちこちボコボコに凹んだ自販機が真ん中にある。ただ、その自販機、部屋の大きさに比べて小さいし、暗いんで細部がはっきりしないんだ。電気もついてないから、何のジュースが入ってるのかもわからない。ただ、ビールとかのじゃない、清涼飲料水の縦長のやつだった。どのくらい見てたかなあ、10分くらいか。画面には何の変化もないままふっと消えて、その後はまったく映らなくなったよ。俺も見たぜ、って明日学校で山田に言おうと思ったんだができなかった。なんでかって言うと、日曜の午後に山田が行方不明になったんだ。自転車でリトルリーグの練習に出た帰り、そのままいなくなったみたいだ。月曜の朝、担任は山田くんは風邪で欠席ですって言ったんだが、これは誘拐を想定して秘密捜査が行われてたんだな。山田の親父は企業の重役だったから。けども1週間しても見つからず、警察は公開捜査に切りかえた。当時は子どもの誘拐はちょくちょくあって、そのたびに大騒ぎになったから、あんたらも山田の本名は知ってるんじゃないかと思う。結局、あれから40数年たって山田は行方しれずのままだよ。え、山田の家族? いや、よくわからんなあ。親はもう死んでて不思議ない齢になってるはずだし、俺は高校を卒業してその市を出たから。ああ、その市の企業に勤めるのが嫌だったんだ。俺の親は両方とも社員だったから、俺も優先的に採用されたはずだが、あえてまったく別の職種についたんだ。あと、「恐怖の扉」な、山田がいなくなって、日曜の5時には、思い出すたびにテレビをつけてみた。1回だけ映ったことがあるんだ。俺が高3の春休み、その市を出る直前だった。小学生のときとまったく同じ画像に思えたが、ちょっとだけ違った。自販機の前に野球のグローブが落ちてたんだ。山田のだ!って思った。・・・その後、テレビのチャンネルはリモコンで変えるようになり、テレビ放送はバブル期なんかは一晩中やってたな。デジタル放送が始まって、俺も「恐怖の扉」のことはほとんど思い出さなくなったんだよ。で、2ヶ月くらい前だ。その市で、40数年ぶりに小学校の同級会があったんだ。懐かしいんで出席した。俺と同じで同級生はみなジジイになってたが、小学校のときの面影はあった。当時の担任はすでに亡くなってた。あとな、今は俺の実家もその市にはないんだ。だから駅前のビジネスホテルに泊まった。山田の話は出なかったな。同級会の3次会までいって、ベロベロに酔っ払ってホテルに戻った。翌日の始発で戻る予定だったんで早く起きたが、まだ前日の酔いが残ってた。何気なくテレビをつけたら、衛星放送のチャンネルなのに恐怖の扉が映ったんだよ。今までと違うのは自動販売機が大きく画面に出てることで、入ってるジュース缶はどれも全部同じ赤い色、そこに白い字で「山田〇〇」と書いてあった。「あっ!」と思ってリモコンを落とすと、画面が乱れて消えた。その後は見てないが、これ、どういうことなんだ??

  13. 「お母様のお家を訪問しましたがドアを開けて下さいません」ヘルパーさんから電話が入る😨💦💦っったく!おちおち買い物もしていられない。私が母の携帯に📱10回以上電話を掛けるも母は出ない!ヘルパーさんがインターフォンを鳴らしても出て来ないと言う。しかしTVの音量は下がるので!分かっているはず!確信犯か私は買い物途中で💦💦電話をし続ける事に疲れ果て😨ヘルパーさんには謝り🙏今日はお帰り頂いた💦💦私怒り心頭💢である💢あれだけ!ヘルパーさんの来られる日時を確認して掃除機やらクイックルワイパーやらお掃除シートやら!揃えて置いておいた!というのにっおのれーーーーー👊、、、夕方🌆母に再度、電話したら、、、あっさり出た😑「何にも気が付かなかった!聞こえなかった!」と言うばかり😂それなら、、私の10回以上電話した着信履歴は??なぜ無視したの😑💢怒ったらダメなんだろうか?🥹かえって依怙地になるばかり、なのだろうか?母は母の言い分があるのだろうか?私は怒り💢が沸点まで達しグツグツしているのだが!当分は私が、、ヘルパーさんの来る日は実家に行き、立ち会うようにしよう。それしかないわしかし、、3月は忙しい😭💦💦逆に「3月、暇な人っているの?」と聞きたいくらいだ!私の仕事がまたひとつ増えてしまった😑

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  14. 気象系の(山メイン)妄想小説です実在する人物・団体とは一切関係ありませんBL的表現(18禁)を含みますご理解のある方のみお進み下さいS side『んぁっ…///!』『ふぅ~っ…///』ゴロンッ…///俺は…智の膝に…寛ぐように…寝転んだ…『あぁ…気持ち良いな…///』『っ…///』そして…瞳を閉じた…じ〜っ…///あからさまに…感じる視線…w『フフ…///』『ぁ…///』パチッ…。目を開ければ…確りと互いに目が合い…カーッ…///智の頬が…紅く染まっていく…『智…好きだよ…』『っ…///!』あぁ…可愛いな…///自然と口にして…また瞳を閉じた…『翔…ぉ…僕も……す…好き…///』『ん…///』辿々しくも…返事が返ってきて…その想いに安堵しながら…『……///?』心を…落ち着かせた…『スゥ…スゥ…』『へ?』歳のせいだろうか…最近は…疲れが溜まると…あっという間に…『ンゴッ…!』『んぁっ…///!?』夢の中へと…誘われて行く…それとも…絶対的な安心感からなのか…ちょん…♡『んふふ…///』智の可愛いイタズラに…気付くことなく…俺は…気持ち良く爆睡…wいや…現実逃避とでもしておこうか…あまりイチャイチャしてしまうと…///俺のオレが…大変な事になるんだよ…///そう…これ以上…智を困らせる訳にはいかないから…ここは…大人の俺が確りしないと…///あと数年…あと数年で卒業だ…そう…智が高校を卒業したら改めて…この先も…ずっとずっと…一緒に居ようと…智に…誓うから…蒼

    Troublemaker?199
  15. 警備員の山崎さんの話どうも今晩は、山崎と申します。よろしくお願いします。自分はこの4月から、警備員をしてます。はい、警察を定年退職しまして、その後の再就職ということです。うちの県では、警察とコネのある警備会社がありまして、退職後はそこへいく人がけっこうな数いて、私もその一人ということです。その警備会社の経営者も元警察官なんです。ですから、私のような退職者には気を遣ってくれまして、例えば道路工事現場の交通整理など、キツイ現場に派遣されることはないんです。それで、私が派遣されたのは、地元のある大学病院です。かなり大きなところですよ。1日の外来患者数が2千人ということです。3交代のシフトで、24時間警備をしてます。1シフトの配置は4人。病院の警備なんて楽なもんだろう、と思われるかもしれません。じつは私も、最初はそう考えてたんですが、これがそうでもなかったんです。ほら、病院関係者の数も患者数も多いですから、いろいろなことが起きるんです。私の配置は病院の1階で、警備員のブースに立ってます。まず気をつける第一は患者さんですね。入院してる患者さんが、病院着のまま外に出ていくことがあるんです。外には植え込みがありベンチが備えられているので、そこで日光浴してる場合もありますけど、多くは喫煙です。ほら、今は院内完全禁煙で、喫煙所なんかもないでしょう。だから、急な入院になった患者さんが、どうしてもタバコを吸いたくて、点滴のスタンドを引きずったまま、外の病院の門のところまで行ってタバコ吸ったりするんです。そっと後をつけていって、まあ、病院外なら文句は言いませんが、敷地内で喫煙してる場合はやんわり注意します。私はタバコ吸わないのでわかりませんが、そんなにしてまで吸いたいもんなんですかね。あと、患者さんが看護師や医師に暴力を振るうというケースもあります。そういうときは非常ボタンで連絡が入るので、駆けつけて止めるんです。やってみると、なかなか大変な仕事でしたね。ああ、すみません、本題に入ります。会社で、病院警備の概略の説明を受けた後、仲間の警備員に紹介されたんですが、そのとき先輩の一人にこんなことを言われたんです。「あの病院では、ときどき小柄で黒いフードをかぶった人を見かけるが、関わらないことだ。何も実害はないから」でも、そう言われても気になるじゃないですか。「どういうことです? それ、何者ですか」 「わからない。だがわれわれの仕事には関係ない。とにかく見ても知らないフリをしてればいいから」それ以上の説明はしてくれなかったんですね。でも、かえって気になるじゃないですか。ですから、勤めて最初のうちは妙に意識してしまって、黒フードの人物がいないか探したりもしたんです。でも、ずっと見ることはなくて、そのうち忘れてしまいました。で、1ヶ月くらいしてです。午後の3時ころになると、外来患者の会計もあらかた終わって、ぐっと人の数が少なくなるんです。私は4時に交代でしたから、その時間帯になると、ああ、今日も何事もなかったってほっとした気分になるんです。そのときに、黒いものが検査棟のほうからやってきたんです。小柄で全身黒ずくめ、上はパーカーというんですか、黒いフードを頭からすっぽり被ってて、下は裾のすぼまったズボン。男か女かもわかりませんでした。それがね、スーッと滑るような感じで進んでくる。不思議なことに、足を動かしてるようには見えませんでした。そのとき、先輩に言われた黒フードの話を思い出しまして、これがそうかって思ったんです。はい、関わるなとは言われましたが、注目してました。すると黒フードは、たくさん待合のイスが並んでる前にたたずんでたんですが、ちらほらいた患者さんの一人が立ち上がると、フーッとそっちに近づいていって、通路に出た患者さんの後ろにぴったりくっつきました。不自然ですよね。だからブースから出てそっちに行こうとしたとき、黒フードは患者さんと重なったんです。これ、くっついたってことじゃなく、何と説明すればいいかわからないんですが、患者さんと黒フードが同じ空間にいて重なってるってことです。驚いて立ち止まりました。数秒、2人は重なったままで、それから患者さんのほうは力なく歩いて玄関のほうへ向かい、黒フードだけがその場に残ったんです。わけがわからなかったですよ。黒フードはしばらくそのまま立ってましたが、また、滑るような動きで検査棟のほうに戻っていきました。4時になって、同僚が交代時間で集まったときに、見たことを話しました。そしたら一人が、「ああ、黒フードな。月に1回くらい出るんだ。でも、そのことで苦情が来たことは1度もないから、気にしないほうがいいよ」こんなふうに言われました。それから、4ヶ月の間に3回見ました。前とほとんど同じです。人の少なくなる時間帯に出てきて、患者さんの一人に近寄って重なる。それで、その患者さんが倒れるわけでもない。もしかしたら、患者さんには黒フードは見えてないのかもしれません。それでね、私も気にしないようにすることにしたんです。その後、また1ヶ月ほどして、やはり午後3時ころです。その日私は少し腹の具合が悪くて、できるだけ病院のトイレは使わないようにしてたんですが、我慢できず近くの患者用のトイレの大のほうに入ったんです。ホッとしていると、隣の個室に人が入る音がして、その人がわっと泣き出したんです。びっくりしました。その人は泣きながら、「なんで俺が癌なんだよ、末期って何だよ!」きれぎれにそんなことを言ってました。ああ、かわいそうに、告知を受けたんだなって思いました。まだ若いと思える声でしたね。私も困って、音を立てないようにしてたんですが、ひとしきり泣いた後、その人が個室から出て手を洗う音が聞こえたので、しばらく待ってから個室から出ました。こんな大きい病院だから、重病の告知をされる人も日に何十人もいるんだろう、気の毒に・・・そう思って洗面台に向かったとき、戸が開け放しになったトイレから、黒フードが出てきたんです。さっき泣いてた人が入ってた個室です。あっと思いました。黒フードはやはり滑るように進んで、私のすぐ近くまで来たんです。はい、1mくらいしか離れてなかったんですが、黒フードの姿はぼうっとぼやけてて、ちゃんと見ることができなかったんです。重なられちゃたまらないと思いました。それで飛び離れたんです。そのときに洗面台の鏡が目に入りまして、黒フードの姿も映ってました・・・というか、鏡に映ってるのは、人の形をしていない、ぼこぼこした黒い固まりだったんです。あとは後ろも見ないでトイレから出てブースまで逃げ戻りました。その後、黒フードがどうなったかわかりません。またいつものように検査棟へ戻っていったのかも。そのときも同僚に話をしました。「黒フードと重なったらどうなるんでしょう?」とも聞いたんですが、同僚は「わからない。そんな近くまで来たことがないし。とにかく関わらないことだ」いつもの調子でした。それ以来、病院の勤務が怖くなりました。あの後はまだ黒フードは見てないんすが。あれ、いったい何なんでしょうか。死神?そうなのかもしれませんが、違うような気もするんです。警備員の三輪さんの話じゃあ話していきます。僕ね、街頭警備をしてるんです。この市には大きな飲食街があって、依頼はそこの組合から。2人組で飲食街を歩くんです。もちろん警察も出てますけど、それだけじゃ手が足りないので。仕事は酔っ払いの介抱とかいろいろです。その日は、年配の辻さんって人と組んでました。かなり広い飲食街ですから一回りするのに2時間近くかかります。その2周目ですね。飲食街の外れに、ヘルスやソープが10店舗ほど集まった一画があって、その近くに小公園みたいなとこがあるんです。植え込みに噴水、ベンチがいくつかある。昔はそこで覚醒剤の取引があったりしたんですが、今は警察も頻繁に回ってるんで、大きな事件は起きてないですけど。その公園にさしかかったとき、若い女がふらふら歩いてきて、そこのベンチに座ったんです。風体から、近くの店の嬢だと思いました。座ってすぐ、女はすすり泣きを始めまして。でもね、そういうのには僕らは関わらないんです。自殺でもしそうならともかく、個人の事情ですから。そっとその場を離れようとしたとき、いつのまにか女の横に黒いフードのやつが立ってたんです。すごく小柄でした。僕も辻さんも立ち止まりました。そいつが泣いてる女に何かするんじゃないかと思いました。黒フードは、女のすぐそばまで近づいたんですが、女は気づいた様子がない。「マズいすね」そっちに向かおうとしたとき、辻さんが僕の腕をつかんで「待て、あれはこの世のもんじゃないから」って言ったんです。「え?」 「まあ、見てな」黒フードは、座ったまま泣いている女の膝の上に座るようにして・・・重なったんです。「え、え?」 「前にも見たことがあるし、先輩から話も聞いてる。あれは、人の悲しみを食って生きてるもんらしい」しばらくして、女は泣き止んで店のほうへ戻っていき、黒フードは滑るようにして植え込みの中に消えましたよ。

  16. Troublemaker?198
  17. 『 空人(そらびと)経由のメッセージ』Chapter. 2〝次代への羅針盤〟・・・・ことわざ&かくげん・・・・【〝昔の人〟は〝言いました〟】・・・«K−4»・・・『 宝の持ち腐れ 』The divine radiance The divine impact《2025年正月元旦》【 願う 】∥〝碧天(あおぞら)〟の〝如く〟∥撮影者:空人 ( 2025年 1/1 ) 撮影機種:AQUOS R9 (スマホ)・・・・〝 Today's Menu 〟・・・・《本日の〝メニュー〟》《 Today's.1 》【宝の持ち腐れ 】(たからの もちぐされ)✡《 Today's. 2》『〝谷〟深ければ〝山〟また高し』The divine radiance The divine impact〝秋の夕焼け〟【 熾天使(してんし)−1 】セラフィム (Seraphim)撮影者:空人 ( 2024年 10/23 17:22 ) 撮影機種:AQUOS R9 (スマホ)✡・・・・・・Prologue・・・・・・・・・✡《プロローグ》✡・・・〝言葉〟には〝影響力〟・・・・・・✡・・・・・・Power(パワー)・・・・・・✡・・・・・・が〝 ある〟と〝言われて〟いますその〝パワー〟を『ことわざ&かくげん』の〝知識〟でさらに〝強化〟したとき〝次元が変わる〟とも言われ«〝混沌(こんとん)〟とした〝現代〟»において〝心強い〟『〝羅針盤(らしんばん)〟の〝ひとつ〟』となることでしょう〝何〟を〝信じ〟〝どこ〟へ向かって〝進めば〟良いのかそして〝どのように〟対処したら良いのかその答えを〝求める〟のが空人(そらびと)経由のメッセージChapter.2【〝昔の人〟は〝言いました〟】なのですさぁ~〝始め〟ましょう今回の【〝昔の人〟は〝言いました〟】・・・〝スタート〟です・・・《Today's.1》【宝の持ち腐れ 】(たからの もちぐされ)⇓―《意味》―〝役に立つ物〟を持ちながら〝利用しない〟ことまた〝優れた才能〟がありながら〝発揮しない〟こと⤵️〝もったいない〟😮‍💨🥺 ですよね 🥺😮‍💨与えられた〝才能〟を〝使わない〟のはねぇ~〝そう思いますよね〟・・・ところで〝あなた〟は【 宝の持ち腐れ 】って〝他人事〟😯だと〝思って〟ます?😮‍💨〝とんでもない〟ですよ《〝才能〟とは》・・・〝神〟が〝選んで〟〝皆〟に〝平等〟に〝授けた〟😀🥳🤔〝贈り物〟🤔🥳😀・・・Gift・・・だから〝あなた〟にも必ず〝ある〟のですよただ〝氣づかない〟だけそして〝才能〟には〝優劣(ゆうれつ)〟は〝無い〟のです〝神〟が〝選んで〟〝あなた〟に〝授けた〟のだから〝優劣〟に〝ぶ〜たれたら〟ダメですよ😕そんなことを〝する〟あなたの〝姿〟を視(み)た〝守護神さま〟は〝寂し〟そう*¹ですよ😮‍💨〝神〟は〝あなた〟にも😀🥳🤔〝贈り物〟を🤔🥳😀・・・Gift・・・〝授けてくれた〟だから【 宝の持ち腐れ 】って〝他人事〟では😯😮‍💨〝ない〟のですよ😮‍💨😯✡・✡・✡でも〝慌てる〟ことは〝無い〟のかももう少し〝あなた〟が〝成長〟したら〝本領発揮〟です・✡・ ・✡・ ・✡・時を待つ・それもまた・🥳・・〝人生〟なのでしょう・・🥳😀😯🤔🤨🤔😯😀〝神〟が〝あなた〟に〝授けた〟😀🥳🤔〝贈り物〟🤔🥳😀・・・Gift・・・それは〝あなた〟が〝幸せ〟に〝なるため〟だからこそあなたが〝使ってくれる日〟が〝必ず〟来るのです・・😀🙌😀🙌😀・・✡〝ちょうど〟〝あなた〟が〝必要〟とする〝タイミング〟でね・・✡・✡・・〝長〜い目〟で〝視(み)て〟〝お楽しみ〟にですね~〝慌(あわ)てない・慌てない〟・・😀😀😀😀・・〝守護神さま〟は〝寂し〟そう*¹は後程〝関連ブログ〟のリンクを挿入します《Today's.2》『〝谷〟深ければ〝山〟また高し』⤵️人生〝辛(つら)いこと〟が〝多ければ〟〝その後〟に〝こそ〟〝多くの喜び〟が〝待って〟いる・・✡・✡・・人生の〝山頂〟の景色を〝楽しみ〟に〝歩(あゆみ)〟を〝進め〟ましょう✡〝人 〟には〝それぞれ〟〝人生〟の〝山頂〟が〝ある〟のです〝他人〟と〝比べる〟必要は〝ない〟のです・・✡・✡・・人生〝まだまだ〟✡捨てたもんじゃない✡ですよ・・・✡・✡・・・〝完歩(かんぽ)〟の〝こつ〟・・✡・・〝それは〟途中の〝景色〟も✡〝楽しみながら〟✡そして✡〝 気楽 〟✡ にねそれも〝 成長の糧(かて)〟なのです・・✡・✡・✡・・〝ふぁいと〟ですよ😀✌️・・Fight・・The divine radiance The divine impact《今回のブログに関連する作品のリンク》(〝タップ〟してご覧ください )①【〝守護神さま〟は〝寂し〟そう】に関して『空人(そらびと)経由のメッセージ【〝 守護神さま〟 は 〝寂し〟そう】』数ある ブログ から空人(そらびと)経由のメッセージ―〝 真実の神々 〟からの〝 叡智(えいち) 〟―【〝 守護神さま〟 は 〝寂し〟そう】«〝聖なる 夜明け…ameblo.jpThe divine radiance The divine impact〝秋の夕焼け〟【 熾天使 (してんし) −2 】セラフィム (Seraphim)撮影者:空人( 2024年 10/23 17:22 ) 撮影機種:AQUOS R9 (スマホ)👼 次回予告 👼『 空人(そらびと)経由のメッセージ』Chapter. 2・・・・〝Season. 2〟・・・・【 メッセージ 】・・・« 2K−1 »・・・《〝未来〟への〝誘(いざな)い〟》✡公開予定日✡2 /28金曜日 AM0:00👼🙇🙇👼次回も〝お楽しみに〟The divine radiance The divine impact〝ある冬の日の夕焼け〟【〝天界〟からの〝 伝言 〟】撮影者:空人( 2024年 12/29 16:44 ) 撮影機種:AQUOS R9 (スマホ)〝読者〟の方々と〝共に〟〝最高の幸運の連続〟を与えていただき〝感謝〟いたします👼つづく👼👼🙇🙇👼〚ご注意とお願い〛〝リブログ〟以外の〝無断転用〟を〝お断り〟しますP.R・・《空人(そらびと)の〝お推め〟》・・・・✡・・・・✡〝知って〟ました?✡・・『〝罪悪感ゼロ〟レンジ 調理も〝可〟』【豆100%】ですが〝なにか? 〟毎日食べる食事だから・・・《〝健康〟は食事の〝栄養素〟から 》・・・〝植物性たんぱく質〟〝食物繊維〟がたっぷりも〝嬉しい〟ね最安値だって😮〝継続は力〟定期購入が〝お得〟・・✡・・・・✡〝知って〟ました?✡・・『〝小麦粉〟〝バター〟〝牛乳〟』⇒〝不使用〟【豆粉のパン】ですが〝なにか?〟毎日食べる食事だから・・・《〝健康〟は食事の〝栄養素〟から 》・・・〝食物繊維〟〝鉄分〟〝ビタミンB₁〟が〝たっぷり〟も〝嬉しい〟ね〝継続は力〟定期購入が〝お得〟・・✡・・〝美味い〟〝楽しい〟〝期待大〟〝身体が喜ぶ適度な運動〟ZENB式【ダイエットプログラム】《〝食事の見直し〟+〝適度な運動〟》プロの〝パーソナルトレーナー〟監修・・〝医師も推奨〟・・〝参加者〟の〝継続希望意向〟・・・90%・・・〝継続は力〟先ずは〝チャレンジ〟スタート*『〝始め〟なければ〝はじまらない〟』*・・✡・・ご準備は〝お早めに〟・・✡・・ご準備は〝お早めに〟

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    K‐4空人(そらびと)経由のメッセージ【〝昔の人〟は〝言いました〟】『宝の持ち腐れ』
  18. うちは不動産会社なんだよ、それは知ってるんだよな。でなに?新人研修について話せばいいんだよな。いいけどもよ、言っとくがうちはブラック企業じゃねえんだ。給料は同業他社に比べりゃ悪かねえよ。それに残業手当もきちんとつけてる。そういう意味では優良企業だ。ただまあ、社員教育はスパルタだからな。そのことが知りたいんだろう?ああいいよ、話してやる。うちは・・・3つの県にまたがって事業を展開してて、営業所は全部で12ある。今年度は全社で4人、新入社員が入った。で、そのうちの一人の教育係が俺だってわけね。あ? テレアポ? 飛び込み営業? そんなありきたりの研修はやらねえよ。そんなもんは黙ってても自然に覚えるだろ。いいか、不動産業ってのは生き馬の目を抜く商売なんだ。業務マニュアルなんてないし、あってもどうせ役に立たねえ。物件も顧客も千差万別なんだよ。だからなあ、研修の主眼は「人生の厳しさ」これを叩き込むことにあるんだ。うすらぼんやりしてたら、たちまち野垂れ死にしちまうこの世の中を泳ぎ切る覚悟を、まずは身につけさせるんだよ。ああ、俺が担当したのはこの4月に大学を卒業した山本ってやつ。背がひょろ高くて、髪型なんかも坊っちゃん坊っちゃんしたやつでな、こりゃあ鍛えがいがありそうだって感じたね。でな、まず最初にやったのは、うちで扱ってる物件に寝泊まりさせること。そうすりゃ不動産屋が扱ってる商品ってものを肌で感じ取れるだろ。うん、最初に連れてったのはアパートの1室だよ。ここで3日間生活させるんだ。え、どんなアパートかって?それをこれから話していくんだよ。夕方、俺は山本とそのアパートに着くなり、ワゴン車に積んであった布団一式を運び込ませた。家具なんかはないけど、アパートの中は清掃済みできれいなもんだ。それでな、俺が布団を置く位置を決めて敷かせたんだ。それからビデオカメラをセットした。ああ、山本がズルしないように、寝てる様子を記録するためだ。ズルって何かって? 今にわかるよ。山本には、自分で夕食をコンビニからでも買ってきてその部屋で食べること、それと11時になったらカメラのスイッチを入れ、小さい灯りをつけて寝ること、この2つを指示したわけ。やつは変な顔をしてたな。まあ当然だ、こんな研修は他社ではやってない。質問をしたそうだったが何も言わなかった。んで、翌朝、そのアパートを朝の8時に訪れたら山本はもう起きてた。「どうだ、よく眠れたか」 「・・・はい、まあだいたい眠れたんですが、布団に入ってしばらくして、金縛りになりまして」 「それで?」 「体がピクリとも動かなくなって、指一本動かないし、目も開けられなかったんです」「うん、それで」 「しばらくしたら、自分の顔を何かがこする感じがしたんです。上下に何回も、何回も」 「うんうん」「これ何だろう? 変な感触だなあって思ってるうち、いつの間にか眠っちゃいまして」 「うんうん、予定通りだ。じゃあ次の司令を出す。今夜も金縛りになるはずだから、そんときに頑張って目を開けるんだ。それにはちょっとしたコツがいる。寝ながら吸う息と吐く息を意識して呼吸を整え、息を吐いたときにガッと力を入れて、まぶたをこじ開けるんだよ」 「わかりました。やってみます」まあこんなやり取りをして、この日の日中は得意先まわりに連れ回した。で、いっしょに夕飯を食べ、夜の9時過ぎにそのアパートに戻ってきた。「いいか、金縛りになったら朝言ったように目を開けるんだぞ。それと、何があってもこのアパートを逃げ出しちゃなんねえからな。お前はまだ試験採用期間中だってことを忘れるな。このビデオはお前が逃げたりしないように撮ってるんだから、いいな」こう念を押し、俺は山本を残してアパートを後にしたんだ。翌朝、また8時きっかりにアパートを訪れると、山本は頭まで布団をひっかぶってまだ寝ていた。俺がそれをひっぱがすと、山本は固く目をつぶってブルブル震えてたんだよ。「こら起きろ!」俺が2.3発、顔にビンタをすると山本は半身起き上がって、「先輩~~~」と情けない声を出した。「おい。どうだった、金縛りになっただろ」 「・・・はい」 「そんときちゃんと目を開けたか?」 「・・・・はい」「よし、じゃあ何が見えた?」 「・・・足の裏です。両足の足の裏が垂れさがってて、それが自分の顔を往復でなでてたんですよ」 「そうか、上出来だ!」 「え?」 「じゃあ第3段階に入る」俺はそう言って、山本に布団の位置を直させた。ああ、敷いてる場所はそのままで、頭と足の位置を逆にしたんだ。「何でこうするんですか?」 「いや、その足の裏ってのが何か、お前に全容を知らせるためさ。いいか、何があってもこの部屋を逃げ出すなよ。そしたら解雇だからな。必ず朝までここにいろよ」こう念を押してから、山本に着替えさせ、その日は会社のデスクで不動産用語辞典を読ませておいた。でまた夕方になって、いっしょにそこのアパートに行ったわけよ。それから9時ころまでいろいろ話をして、俺はアパートを後にしたんだ。翌朝、また8時に行ってみると布団に山本の姿がなかった。部屋のすみで膝を抱えてガクガク震えてたんだな。「おい、どうだった?」 「先輩~~ 勘弁して下さいよもう~~」「ダメだ、これは大事な研修の一環なんだから。昨夜、何があったかちゃんとしゃべれ」 「・・・また金縛りになったんです。それで、先輩に教わったとおり目を開けたら・・・足元で寝間着を着たジイさんが首を吊ってたんですよぉ~~。1日目と2日目に自分の顔をなでてたのは、そのジイさんの足の裏・・・」「よしよし、それでどうした」 「それ見た瞬間に逃げ出そうと思ったんですが、体は金縛りで動かなくて・・・ 目も閉じられなくなっちゃったんです」 「うんうん、それで」 「そしたらです、がっくり首を垂れてたジイさんが急に頭を起こしてカッと目を見開き、自分のほうをにらみつけて、『苦しい、恨めしい・・・』って言ったんです。覚えてるのはそこまでで、怖さのあまり気絶してしまい、気がついたら朝になってて・・・」「よーし、上出来だ。この部屋はな、じつは事故物件なんだ。ワケアリ物件とか瑕疵物件、要告知物件とも言う。お前が見たのはここに住んでたジイさんの幽霊だよ。ジイさんはな、子どもはいるんだが遠くに離れてて、ここで一人暮らしをしてたが、オレオレ詐欺にひっかかってなけなしの貯金を取られて、それで自殺したんだよ」 「えええ、そんな部屋に自分を泊まらせるなんて・・・」 「馬鹿野郎! それこそが研修の骨子なんだ。お前、ジイさんの姿を見て何を感じた?」「いや、怖くて・・・」 「怖いのはあたり前だ、それ以外には?」「・・・物悲しいなあとか・・・」 「悲しい? クソ野郎! ここで必要なのは軽蔑の感情だ。わかるか、ジイさんは敗残者なんだ。お前はああなりたいのか?」「いいえ」 「だろ、これから人生の先は長い、俺らは戦って戦って勝っていかなくちゃならないんだ。あのジイさんの姿は反面教師なんだよ」 「はあ」「なんだ気のない返事だな。まあいい、これで研修の第一課程は終了。次は一軒家の物件に住んでもらう」 「・・・それってまさか」 「そうだよ。そこも事故物件だ。夫婦と子ども2人、たいそうなローンを組んで念願のマイホームを建てたものの、旦那がまだ40代前半でリストラされちまってな。それを悲観して、子どもらを絞殺、奥さんは刺殺の一家心中」「ひええええ、そこも出るんですか?」 「ああ、もちろん4人分出る」  「もう、勘弁してくださいよう」 「ダメだ、この研修は俺も新人の頃にやった。こここのアパートもその一軒家も、新人研修のためにわざと売らずに残してあるんだ。いいかよく聞け、リストラされたオッサンは人生の敗残者だ。そんなのを伴侶にした妻も同じ。まあ子どもらはかわいそうだけどな。この研修の目的は、お前に人生の荒波ってものを思い知らせ、他人を押しのけてでも生きのびてやるっていう気力を植えつけるものなんだ。わかったか。なあ、うちの会社って、社員みなバイタリティがあるだろ。それも全部、この研修のおかげなんだよ。さ、理解したらその一軒家に出かけようか。前に使ってから1年ぶりだから、まずは掃除からやらなくちゃな」

  19. 私自身の話ではないんですが、それでもいいでしょうか。今、大学1年で小説のサークルに入ってるんです。内容は純文学に近いもので、大学でもかなり歴史のある由緒正しいサークルなんだそうです。先輩方も文学青年ぽい人が多くて、真面目に活動してるサークルなんです。それで、2週間ばかり前に合評会があったんです。メンバーそれぞれが作品を持ち寄って、お互いに批評し合うんです。・・・今だったらプリンターで印刷が簡単にできるので、人数分原稿を用意して回し読みすれば時間の節約になるのに、と最初は思ったんですが、私たちのサークルの伝統で、一人一人が自分の作品を朗読するんです。合評会は土曜の9時からでした。人数は十数人いるんですが、その日、作品を出す人は8人で、たぶん午前中いっぱいかかるだろうと思っていました。4人終わったら合評し、休憩を入れてまた4人という予定で、私は最初のほうで朗読をしました。実家のある四国の港町のスケッチみたいなものでしたが、かなり厳しい批判をいただきました・・・すみません、よけいなことですね。それで後半の朗読の最初です。武田さんという2年生の男の先輩でした。いつも藤沢周平風の時代物を書いてくる人なので、今回もそういう感じのだろうと思ってたんです。題名は『髑髏』でした。武田さんが題名を重々しい口調で言ったとき、「ウッ」と息を飲む音が聞こえ、そちらを見ると3年生でサークル長の伊野さんで、なんだか恐い目をしていました。武田さんはそれに気がつかなかったようで、そのまま朗読を続けました。田舎に住む一家のおじいさんが亡くなって遺品整理をしていたら、茶箪笥の中から子どものような小さな髑髏が見つかって・・・という出だしで、どうやら現代が舞台のホラー作品という感じでした。でも、どんな話か最後まで聞くことはできなかったんです。1分も朗読しないうちに、「ちょっと武田、ストップ」と叫んで、伊野さんの朗読を止めさせたからです。武田さんがきょとんとした様子で「どうしたんですか」と聞きましたら、伊野さんは「お前・・・その話どっかで読んだか」と言ったんですが、まるで詰問するような調子でした。「いやだなあ、盗作とかじゃないですよ。完全なオリジナルです」と武田さんは笑いながら抗弁しましたが、そのとき伊野さんが真顔なのに気づいたようでした。「ああ、すまん盗作と疑ってるわけじゃないんだ。ただその・・・確かめたかっただけだ」伊野さんがやや うろたえたように言いました。「変だなあ、気になりますね。どっかで似たような話を読んだことがあるんですか」武田さんがそう言うと、伊野さんは少し考えて立ち上がり、サークル室のロッカーの奥を探って、かなり古めかしい文書綴りを引っぱりだしました。「何ですかそれ?」他の2年生が聞くと、伊野さんは、「これは歴代のサークル長に受け継がれてるもんで、これまでの合評会の記録とか、サークル誌を編集した記録が載ってるやつなんだが、最初のが昭和31年になってる。こんな分厚い記録だから俺も全部読んじゃいないが、サークル長に決まったときに、前の先輩からじきじきに言われたことがあるんだ。・・・といっても信じられないような話なんだが」「それが武田さんの作品と関係があるんですか?」私が聞くと、「そうだ」伊野さんは答えました。「いいか、その引き継ぎと関係があるとこをちょっと読んでみる」分厚い綴りを手元で開いて読み始めました。「警告、これは冗談ではなく本サークル員の命に関わることである。われわれは自分が作品を書いていると考えていて、それはおおかたは正しいが、そうではない場合もある。つまり話のほうに命があって、われわれにそれを書かせる場合だ。信じられないだろうが、そういうことはある。このサークルには『髑髏』という話がとり憑いている。自分もこのことを初めて聞いたときは信じられなかった。しかし合評会でこの話を耳にし、その後4人の命を失ってやっとわかった。最後までこの話をさせても、聞いてもいけなかった。それを後悔している。『髑髏』を封印することはできない。いずれまた現れるだろう。それを絶対に広めてはならない。最後まで聞かなければ大丈夫のようだ。どんなことをしてでも抹消せよ。◯月◯日 第11代サークル長 鈴木◯彦」「マジですかあ」1年生の一人が声をあげた。「・・・マジなんだと思う。俺もちょっと調べたんだが、これを書いたのは昭和40年台のサークル長で、そのとき確かに短期間で5人のメンバーが亡くなってる。全部事故死で、頭をやられているんだ」 「えーでも、そんなことありえないですよ」「どうして『髑髏』っていう題だけで、それと同じ話ってわかるんです?」「・・・いい、質問だな」伊野さんはそう言って下を向きました。「この鈴木さんが、簡単なあらすじを書いて残してくれてるんだ。祖父の遺品の中から子どもの髑髏を見つけて・・・その後、戦死したじいさんの兄と貂の毛皮が出てくるんだろ」伊野さんは武田さんのほうを見てそう言いました。「・・・そうです」武田さんは愕然とした様子でうなずきました。「でも、その鈴木という人は話を全部聞いたか、読んだかしたんでしょう」誰かが聞きました。「もちろんそうだ・・・で、鈴木さんはこれを書いた翌日に亡くなってるんだよ」全員が言葉も出ず、顔を見合わせました。「大学の図書館のコンクリの階段があるだろ・・・あそこから仰向けに落ちたようだ。頭蓋骨骨折と新聞の縮刷版にはあった」 「あんなゆるいとこから・・・」「武田・・・お前この話、どうやって思いついた?」伊野さんがやや口調を変えて聞きました。「いや、夢で見たんです。夢の中に頭の大きい福助みたいな着物を着た子どもが出てきて、『話をさずけようぞ』と言ってしたのがこの話なんですよ」武田さんの声は泣きそうになっていました。「ふだんから小説の筋はあれこれ考えているんですが、夢の内容なんてほとんど覚えていないし、覚えてたとしても、起きてから考えれば到底使いものにならないようなのばっかりで・・・でもこのときは違ってたんです。一字一句まで覚えてたし、すごい筋だなって興奮しました。だからめったに書かない現代ものの、それもホラーを・・・」武田さんの声は震えて、最後まで続きませんでした。「とにかくだ、お前の原稿、それ俺によこせ。ぜったい誰も読めないようにして始末するから。それと、これパソコンで打ったんだよな。他に誰かに見せたか?」と伊野さんが聞き、武田さんはただふるふると首を振りました。「そのデータは何かのソフトを使って完全に消去しろ。いや、パソコン自体処分したほうがいいのかもしれない。・・・海に沈めるとかして。サークル費で新しいのを買ってやるよ。それからお前は、今後しばらく俺と行動しろ。 ・・・高いとこに登ったり、乗り物に乗ったりするな。どうやら前回『髑髏』が出てきたときに、話を最後まで聞いたのは亡くなった5人の他にも数人いたようだが、その人たちが少なくとも大学時代に死亡したという記録はなかった。ある程度の期間が過ぎれば生き残れるのかもしれない」会はそのままお開きになり、伊野さんはパソコンの始末をしに、武田さんとともにアパートに出かけていきました。残されたサークル員は口々に今の出来事を話していましたが、信じていないメンバーがほとんどでした。伊野さんが武田さんと組んで、みなをからかうためにやった大きな冗談じゃないかって。でも残された綴りを見ると、さっき伊野さんが読んだ黄ばんだ罫紙が綴じ込まれていて、内容もそのとおりでした。私は・・・話自体はとても考えられないことだと思いましたが、また一方で、伊野さんがそんな冗談をする人だとも思えなかったんです。昼食をとるのも忘れて侃々諤々言い合っているうちに、あの知らせが入ったんです。3年の先輩の携帯が鳴り、伊野さんからでした。ビル工事の現場の横を通ったとき、さして大きくもないガラス片が十数階の高さから、防護シートを切り裂いて落ちてきて、武田さんの頭を斜めに削いだということでした。救急車は呼んだものの、脳がこぼれて、応急処置もできないほどの惨状だったそうです。・・・あの合評会から、何をするにも気をつけて生活しています。話は全部聞いてないから大丈夫だと自分に言い聞かせながら・・・です。あの場にいたサークルのメンバーで頭痛がするという人が何人かいます。私も、夜になると後頭部がズキズキ痛むことが何回かありました。それよりも怖ろしいのは、夢の中に頭が大きい子どもが出てきて、『髑髏』の話を始めないかってことなんです・・・でも、寝ないというわけにもいきませんし・・・